プロ無職 PROFILE

なりたい職業がなかった

小学4年生のとき、学校の授業で将来の夢を聞かれて「旅士」というオリジナル職業を書いた。子供のころから、自分は世界を飛び回って働く人間になると信じて疑わなかった。でも、肝心のHowの部分がない。6年生になって、村上龍さんの「13歳のハローワーク」を渡された。一通り読み終えて、当時の僕は絶望した。なりたい職業が何ひとつなかったのだ。中学・高校になってくると、同級生も本気で打ち込めることや、夢や目標を見つけていく。方や自分は未だやりたいことなどなく、何をはじめても中途半端。大学も、就職に強そうという理由で商学部進学を目指した。そんな色々試してる時期にブログとブレイクダンスに出会う。今では大切なルーツとなるふたつだが、この時はまだ、自分を疑いながら退屈な日々を変えるためにはじめた趣味に過ぎなかった。

NY留学、社会人になって

ブログに面白い文章を書くことでインターネットにどハマりし、ブレイクダンスは大学に入って一層のめり込んだ。大学4年生の時にヒップホップが生まれたニューヨークにダンス留学。世界中から様々な人種が集まり、自由とエネルギーに溢れるこの街で価値観が崩壊。ここから第二の人生がはじまった。帰国後、大学生のダンスの頂点を決める大会で日本一を獲る。留学の経験から好きなことだけで生きていくことを決意するが、経験を積むためにアパレルメーカーに就職。上京して働くも、体質的に会社員の働き方が合ってなかった。独立したい、でも未だHowがない。ならいっそ、”無職”を極めようと思った。家賃や食費を0円に近づければ死ぬことはない。死なない状況を作れば後から好きなだけHowを見つけれれる。当時ハマっていたAirbnbをテーマにしたブログを立ち上げ、自宅に泊まりに来た外国人との生活を綴るブログが界隈で有名に。読者から一軒家をもらい、2016年2月に独立。

“プロ無職”という生き方の確立

無職としてやりたいことがない分、聞き手として人の話を発信するのが得意と気づく。次第に、未だ知られていない世界中の人たちのユニークな働き方を伝え、かつての自分のような人に多様な選択肢を提示できればと思った。クラウドファンディングで資金を集め、最先端を走るシリコンバレーに3週間取材へ。ユニコーン企業を10社以上訪問し、SNSで発信しながら全国8都市で講演会を開催。第二段はオランダを中心としたヨーロッパ6ヵ国へ。2018年にはユニークな働き方をしている100人を取材する企画を立ち上げた。その他、フリーランサーに特化した200名規模のオンラインサロンの運営、スマホ1台旅企画を実施。SNSフォロワーが累計5万人を超え、年間300万円のスポンサー契約を結ぶ。世界をフィールドに、人を巻き込みながら自ら仕事を創り出すプロ無職の生き方を確立した。お金、時間、健康、全ての要素が揃って自由だった。

言葉への不信、インターネットへの疑問、矛盾との戦い

取材活動を続ける中で、言葉という表現手段の解像度と閉鎖的な空気が漂う昨今のインターネットの相性に疑問を抱く。何万人もフォローしてくれてる人がいるのに、本当に伝えたいことは誰1人伝わってないのでは?何でもラベリング・カテゴライズし、多様な生き方を提示することが、余計に生き辛さを生んでいるのでは?という自己矛盾に陥った。また、グロースハック的なSNS戦略に、むしろ虚無を感じるようになった。プロ無職としてこの時掴んだ自由は、本質的な自由ではないことを悟った。ここを境に、周りの評価や視線を気にしない、心の内からリアルを絞り出すポエトリーリーディングと、アートの世界に導かれていった。TBSラジオ主催「WORD WAVE」にて自身初となるポエトリーリーディングを披露。フランス、ドイツでも朗読。同年、都内で初となる絵画の個展を開催。心が解放されていくのを感じた。

“プロ無職”の更なるアップデート

言葉は性質として矛盾を嫌うのに、現実は矛盾することでしか進まない。そんなことをまざまざと思い知らされたこれまでの4年間。そんな相対する二元論を一元に合一することはできないか。そのヒントを仏教世界、特に禅に見出す。ポエトリーリーディングの歴史を調べてる際に、ジャック・ケルアックらビートジェネレーションが自由の本質を知るため、鈴木大拙の元を訪問した事実を知る。同郷のため、大拙が禅を英語翻訳し世界に広めた偉人であることを知っていたが、ここで全て繋がったような気がした。大拙の説いた「混沌とは無分別である」や「Suchness(真如、あるがまま)」などの言葉に多大なインスピレーションを受け、地元金沢へ移住。大拙や西田幾太郎らの研究を進めながら制作活動を行う。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、精神だけではなく物理的な分断も進む中で、独自の表現を追求しながらプロ無職の概念の更なるアップデートを目指す。