東京藝大からパリ国立美術学校(エコール・デ・ボザール)に交換留学するまでの過程

東京藝術大学の交換留学プログラムで、パリ国立美術学校(エコール・デ・ボザール)への留学がはじまりました!

かつての芸術の中心地パリ、350年の歴史ある名門ボザール、自分の表現をもっと磨きたい!海外でどこまで通用するのか試したい!

パリ到着した初日からオリエンテーション、翌日からフランス語の授業など、バタバタしながら新生活に慣れようと食らいついてます。

交換留学は自分の所属大学の学費のまま他の大学に留学できます。(藝大は国立=学費が安いのでクソ高いアメリカの美大に留学するとお得!)

海外の大学院進学もありやなーと思っていたこともあり、藝大入学前から留学制度は活用したいと考えてました。

可能性と選択肢を漠然と広げること

でまあ、入学前はまさかフランスに来ることになるとは1ミリも思ってなかったのですが、どうしてボザールに来ることになったかなどの流れや準備したことを綴っていきます。

ちなみに大学院休学して留学しているので、修了はもう1年伸びる予定です!

藝大から海外の大学に交換留学するまでの流れ

—修士1年—

  • 9月 交換留学の情報が藝大側から発表される
  • 10月 TOEICの試験受ける、研究テーマ/留学理由を書いて藝大に応募〜審査
  • 12月 藝大側の審査通る

—修士2年—

  • 4月 ボザールから案内がくる(6月締切)
  • 5月 ポートフォリオ作成や応募書類の英語添削など
  • 6月 ボザールに書類提出〜受理される
  • 7月 ビザ書類の作成〜フランス大使館に提出
  • 8月 留学準備〜資金調達
  • 9月 出国、授業開始!

だいたい1年前から準備する感じです。

度々言ってますが、自分が大切にしているのは「とりあえず出してから考える」です。

本当に留学したいのか、行けるのか、そんなことわからないけれど、とりあえず書類作って出してから考えましょうと。

審査通って「やっぱり違うな」となったら最悪めっちゃ謝って辞退すればいいし、落ちたら落ちただし、通ったらお金のことなどはそれから死ぬ気で考えます。とにかく出す!動く!

教授と面談(2022年7月)

確か夏休み入る前に藝大の教務に行って「いつ2023年度の交換留学の情報が出るか」を確認しました。

おそらく9〜10月くらいと言われ、それまでにできることは「交換留学先の大学の情報を調べる(先輩に聞くなど)」と「語学の勉強」くらいしかないと言われたことを覚えてます。それと、当然ですけど作品つくってポートフォリオを充実させることですかね。

東京藝術大学 取手キャンパス

夏休み前の研究室の面談で、来年度交換留学する意思があることを教授に伝えます。

今思うと、藝大大学院入って3ヶ月で次年度休学して留学するの伝えるのなんか不思議ですよね。もうお前別の環境行くんかい!みたいな。

「君の技術では海外はまだ早い…」とか言われるかとビビってましたが、「山口さんはガンガン海外行った方がいい」と言われたのは嬉しかったです。

決定的に「海外行きたい」と思うことが起こる(2022年8月)

ちょうど1年前、世界的な芸術祭であるドクメンタ15やヴェネツィア・ビエンナーレを観にヨーロッパを回ったのですが、noteで連載してる月額マガジンにはこう書いてました。

やっぱり、自分も海外で勉強したい気持ちが強くて、そんなタイミングで藝大の来年の交換留学の案内が来て、締め切りがもう10月末で(はえーよ)、全然お金も、来年の見通しもないのだけれど、気持ちがそっちに向いてる自分がいるのです。

ここから完全に僕の偏見や愚痴も混在してるのでスルーして欲しいのですが、終わりゆく日本のぬるま湯感や閉鎖感がどうしても拭えず、2年半ぶりに外に出たら相当思考停止やってんなという自分への怒りの気持ちが湧いてならないのです。

いや、こんなに平和で安全で物価が安い(安すぎて心配になる)最高な国ないのですが、それゆえに、世界で起こっている様々な向き合わなければいけない問題に、どうしても他人事のように思えてしまうというか。

もちろん日本にも向き合うべき問題は山のようにあるんですが、レイジーな僕はすぐに環境に甘えて遊んでしまう。

引用元:次の挑戦のフィールドは

というわけで自分の現時点での表現が海外でどこまで通用するか知りたい、もっと美術を勉強したいと思い、留学する意思を強くします。

第一・第二希望の交換留学先を選ぶ(2022年9月)

藝大の交換留学先の情報が発表されます。

こんな感じで、派遣先大学と定員数、留学できる学部、留学できる期間(1セメスター or 2セメスター)や必要な語学条件を確認します。

これは2024年度の美術学部交換留学派遣募集要項

興味のあったシカゴ美術館附属大学の募集がなぜかなく、どこに行こうか迷います。

お世話になってるキュレーターの方に相談するなどして、第一希望をパリ国立美術学校(エコール・デ・ボザール)、第二希望にウィーン応用芸術大学を選びました。

研究計画書/留学計画を藝大に応募〜審査(2022年10月)

留学先をフランスにした理由は

  1. 自分の研究テーマとパリの関連性(ベンヤミンの「フラヌール」、シチュアシオニスト・インターナショナルの「漂流」や「心理地理学」、フランス現代思想、移民 etc)
  2. ボザールは著名なアーティストが指導しており世界中からハイレベルな学生が集まっている印象を受けた
  3. 高い英語のスコアが求められない(藝大の審査時にフランス語ではなく英語で出せる)
  4. ボザールの教授との事前面談がなく、留学後に現地で直接面談できる

これらの理由を400文字以内(短くね???)で研究計画書/留学計画書としてまとめ、自分の所属学部の国際交流委員の教授と、研究室の教授からサインをもらい、藝大に書類を提出します。

3に関して、アメリカやイギリスだとTOEIC/TOEFL/IELTSでゴリゴリ高いスコアを求められます。ヨーロッパ諸国の大学はその国の母国語のスコアを使うか英語のスコアを使うか選べるので、そういう意味では狙い目かもしれません。後述しますがTOEIC550点でも通ってます(オイ)

ちなみにフランス語はまっっったく喋れません。そのせいで今ヒイヒイ言ってますが。

4に関しては、海外留学する人ってこのアーティストの下で学びたい!という人が多い印象で、事前に現地の大学訪問して面談してたり、研究室の教授に紹介受けたりするらしいのですが、自分はそういうコネクション0だったので、ボザールの「現地で直接作品と研究計画を見てもらい所属スタジオが決まるやり方」が合ってると感じました。偶然大好き。

要項にも書いてありますね☟

2024年度の美術学部交換留学派遣募集要項

それと藝大側から「ボザールは留学希望者が殺到している関係で、1セメスター(半年間)しか受け入れできない可能性が高い」と伝えられており、了承の上で第一志望にしました。

※こちらも後述しますが、自分は2セメスター(1年間)の受け入れになりました。

周りからは「ボザールは(特に油画科から)人気でめちゃくちゃ倍率高い」「たぶん落ちる」などと言わてましたが、結果的に大丈夫でした。倍率やどういう基準で選ばれるのかは正直わかりません。

それと藝大経由でTOEIC IPテスト(オンライン受験できる安いやつ)を受けて、そのスコアも提出します。550点しかなくて笑いました。(確か700点くらいは必要)

いや昔はね…800くらいあったんすよ…一応NYに留学してた経験も…数年英語使わないとあっという間に腐ります。

藝大側から受理される(2022年12月)

英語のスコアが低いため「条件付き派遣」となってますが(笑)、藝大側からOKが出ました。

これで交換留学できるわけではなく、あくまで藝大側から受理されただけで、次は先方の大学の受理も必要になります。

ちなみに語学に関してはこれ以降、藝大からもボザールからもスコアを求められることがなくそのまま渡航できました。ラッキー!!!!!!

パリ国立美術学校から案内が来る(2023年4月)

しばらく時が経って、4月ごろにボザールから交換留学の案内が来ました。提出を求められたのは以下の通り

  • 作品のポートフォリオ 20〜25枚
  • ボザールで学びたい理由と研究計画
  • 所属希望スタジオを第一から第三希望まで(理由もあわせて)

もちろん全て英語かフランス語で作成。

あとは学生寮の入居を希望するかなどを書いて、6月1日までに提出することを求められました。

ポートフォリオの作成、応募理由の添削など(2023年5月)

良いタイミングだと思いポートフォリオとWebサイトを一新することに。こういう機会ないと中々更新しないですからね。

それと英語での提出が求められるので、ちょうど藝大で英語で作品のプレゼンテーションをする授業を取っていたので、先生(ネイティブ)に添削してもらいました。結果的にめちゃくちゃ英語の誤りがありました。Deepl翻訳だけに頼るのは危険。特にアート用語は専門の人に見てもらうことをオススメします。

ボザール側にメールで書類を提出して、あとは結果を待つのみです。

パリ国立美術学校への留学受理(2023年6月)

そして6月中旬に無事に受理の連絡が。

しかも、半年(1セメスター)ではなく1年間(2セメスター)ボザールに通えることに。

受入許可書。学生ビザの申請で必要になる。

あわせて学生寮にも住めることになりました。

いまはパリ6区の立地の良い寮に住んでいて、大学まで徒歩で行ける距離なので運が良かったとしか良いようがありません。パリでの家探しは本当に大変らしいので…。

寮からの風景、エッフェル塔が見える

学生ビザ申請の準備〜フランス大使館に提出(2023年7月)

さあこっからが本番というか大変というか…。一気に現実的な話。

6月中旬に留学受理の知らせがきて、9月初旬から授業開始なので、ビザ申請の時間が全然ないことに気づきます。

ビザは申請してから降りるまで1ヶ月とか、繁忙期だとそれ以上かかったりします。ちなみに申請時がその繁忙期間んんんんんっ!!!

速攻でフランス大使館の面接予約をしましょう。ちなみにこの時点で8月下旬しか空いておらず軽く絶望しましたが、心配することなかれ。「交換留学生」においては、毎週水曜の9時〜12時は予約不要で書類を提出しに行けます。

ただ長蛇の列を並ぶことになるので7月のクッッッソ暑い中朝8時から麻布のフランス大使館前の行列を並びました。今思うと熱中症でぶっ倒れそうだったこの時が一番辛かった。

ちなみにこの時はじめて1年間の受け入れだと気づくというアクシデントが起こるのですが。(ずっと半年間だと思っていた)割愛しますが、ビザ申請は大変なので丁寧且つスピーディーに!!

留学準備〜資金調達(2023年8月)

ビザの申請をして結果を待つ1ヶ月のあいだに、留学準備を進めます。当たり前ですが、次に問題になるのはやはり留学資金です。

学費はかかならいので必要なのは家賃、食費、制作費、交通費、交際費といったところでしょうか。

もともと物価の高いパリ、そして昨今のコロナと戦争によるインフレ+円安ですんごいことになってます。ヤバいです。外食はほぼなしで、節約生活して込み込み月15万円が最低くらいかな〜。いやそれでもしんどいかも?

自分は30歳を超えているので「トビタテ!」などの留学奨学金を応募することができません。財団の助成金やプログラムに応募もしてましたが今回はダメで、ほぼ自己資金でなんとかしなければいけません。

しかし自分はスーパー諦めが悪く何がなんでも実現させる奴なので、頂いた仕事をやりながら全国飛び回って、友人各位にプレゼンして作品買ってもらったり、資金調達に回りました。スポンサーになってくれたしゅうへい(@shupeiman)本当にありがとう!いつもサポートしてくれるリツアンSTCの皆様もこの場を借りて感謝です。

引き続き仕事等絶賛募集中です!お気軽にお声がけください!

そして申請から1ヶ月かかってビザ承認(7月19日大使館申請、8月17日自宅着)。出国が9月3日だったのでギリギリ。ビザに関しては早めに大使館行けるように動きましょう!

1年間やったるぞ!

フランスあるある早く言いたい〜。フランスパンで口内ズタズタ&翌日まで顎痛い

そんな感じで、最後の3ヶ月くらいはバタバタでしたが、なんとか無事パリに辿り着いて授業を受けてます。

半年前から使ってるMacbookのパスワードを「go to france」していたのですが、本当に色んな人のサポートのおかげで実現しました。毎日打ち込むので自己洗脳して叶えるという僕がよくやる自己洗脳ムーヴなんですがオススメしておきます。

それとこっちでダンスの練習もはじめています。

勉強するぞ〜作品作るぞ〜〜!!こっちで生活していて感じたことも発信していけれたらなと思ってます。

パリに来た時は連絡ください!では!