子供の幸福度が1位と言われているオランダに来ております。
2007年と2013年に行われたユニセフの「ウェルビーイング調査」において
- 物質的豊かさ
- 健康と安全
- 教育的豊かさ
- 行動とリスク
- 家と環境
という5つの側面と、子ども自身の声から調査した結果、調査対象の先進29カ国中、オランダが総合1位を獲得してます。
日本も教育水準は世界4位と高いのですが、国民1人あたりの労働生産性を比べると、オランダが遥かに高い結果となってます。
オランダのGDPは世界17位。
紺野登さん著「幸せな小国オランダの智慧」によれば、農産物の輸出676億ドル、輸入397億ドル。
純輸出279億ドルは世界最大。
九州ほどの面積で世界最大の農業ビジネス国。光ってます。
その戦略も、日本の参考になると思うのです。 pic.twitter.com/QYrwbUn6AR— 中村伊知哉 (@ichiyanakamura) 2017年6月10日
その大きな違いに、「自由な教育方針」が関係していると考えます。
そして、高い評価の理由には、一体どうのような教育制度や文化、考え方が根付いているのか。日本の教育との違いは?
オランダの教育は本当の意味での自由が確立されている
オランダでは1917年に憲法の23条改正によって、学校の
- 設立の自由
- 理念の自由
- 方法の自由
という3つの自由が保障されました。つまり、生徒を200人以上集めるなど、一定の条件をクリアすれば誰でも自由に学校を設立することができます。
また
- 校舎の建設費用
- 教員の給与
- 生徒一人当たりの補助費用
を同条件で受けられ、国は、宗教や教材選択、時間割や教科といった学級編制などを含む教育方法について基本的に口出ししません。
結果何が起こるかと言うと、学校ごとに教育方針も全く異なる、実に多様な教育が国内だけで実現します。
自分の子供をどのように育てたいか、子供はどういう風な将来を歩みたいか、親子で相談しながら自由に教育を選択していくのです。ちなみに初等教育の約4分の3が私立学校、10%がオルタナティブスクールと言われてます。
オルタナティブスクール(Alternative school)とは
画一的な教育では無く、個人を尊重し子供が本来持っている探求心に基づいて、自律的・主体的に学習や行事が展開されるようにカリキュラムが組まれていることが多いのが特徴です。
大人は教師ではなく、あくまでも子どもをサポートするスタッフという考えが根底にあり、有名な教育法では、モンテッソリー・イエナプラン・フレネ・二イル・シュタイナー・サドベリーバレーなどがあります。
4歳から初等教育が始まるオランダ
オランダでは初等教育(小学校)が8年間あり、満4歳を迎えたら好きなタイミングから通い始めることができます。
先ほども述べたように、「学校設立の自由」によって多種多様な教育方針が確立されているため、校区に左右されず自由に選択することができます。
そして初等教育から飛び級や落第も存在し、同じクラスに年齢が違う子がいるのもごく普通だそうです。日本じゃ中々考えられませんよね。授業料は無料です。
「イエナプラン」が広がりつつあるオランダ
ドイツで生まれ、オランダでも広まりつつある許育方法「イエナプラン」。
イエナプラン教育とは、ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼンが 1924年に同大学の実験校で創始した学校教育。
子どもたちを『根幹グループ(英語ではファミリー・グループを訳されることが多い)』と呼ばれる異年齢のグループにしてクラスを編制したことに大きな特徴がある。
出典:Wikipedia
異年齢で、車椅子の子も、ダウン症の子も関係なく皆同じ学級で学ぶ。先生は存在せず、あくまでサポート役。
子供たち自身が教え、教わる関係が構築されているのです。つまり「受け身」の教育ではなく、自分で考える力を養い、学んだことをアウトプットする力が備わります。
オランダでもイエナプランはまた3%ですが、どんどん広がりを見せてるそうです。
進路希望に応じて3つのコースから選択できるオランダの中等教育(中高一貫校)
オランダの中等教育は進路希望に応じて
- 大学準備コース(6年)
- 高等専門学校準備コース(5年)
- 職業訓練準備コース(4年)
の3種類から選択して進学します。
さらに進路に悩んだら、2年後にコースを正式に決められる「ブリッジクラス」も。
個々にあったコースを選択し、高いレベルのコースにいつでも再挑戦できる仕組みだそうです。授業料はまたもや無料…!
オランダの高等教育(大学ほか)
中等教育で“ディブロマ”と呼ばれる卒業資格を取得できれば、入試なしで志望の高等教育へ進むことができます。
基本的には
- 大学進学コース→大学(基本的に修士)
- 高等専門学校準備コース→高等専門学校(学士)
- 職業訓練準備コース→日本で言う専門学校
という流れ。しかし、医学部や歯学部、ジャーナリズム学部はくじ引きで入学者を決めるそうです。
ディブロマは永久に有効で、好きなタイミングで進学可能。
大学でも飛び級は存在し、高等専門学校で取得した単位の有効性から「2年で卒業!」などもあり得るそうです。
オランダの大学の授業料は?
大学や高等専門学校によって多少の差はありますが、一律年間20万円以下。安すぎる…!
入学者数に応じ、一定の授業料(×人数分)が国から学校へ支給されるそうです。イエナプランなどでも条件は同じ。
また、障がい児も普通校に通えるように、国がハンディキャップを補うための追加資金を提供する仕組みがあるそうです。
日本在住者に聞いた、オランダ教育の話
オランダ滞在中に現地在住者に聞いたリアルな話によると、実際、学校によって教育方針が異なるため、人気の学校は取り合いになるそうです。
初等教育から学校ごとに自由な教育方針が設けられてるため、人気の学校はやはり競争が激しいという…。
また大学の数も少ないため、ここでも競争は激しいのだとか。
2007年の時点で大学(すべて公立)は15校しか存在しないため、進学者は全校生徒の約10%ほど。「大学出てる」だけで相当なエリート扱いをされるるのだとか。
※ちなみに日本は2014年の時点で国公立・私立あわせて781校が存在します
そう考えると、「オランダの教育は日本より素晴らしい!」と簡単に括れません。
オランダの幸福度や生産性の高さは自由な教育から?
初等教育の時点で、自分の学びたいことなどから学校が選択できるという自由な教育制度。
そこで養われるのは、詰め込みで試験や入試をパスするための暗記教育では決してなく、「自ら考えて行動する力」です。
ここに、オランダの子供の幸福度の高さと、生産性の高さの秘密があるのではないか、と感じました。
最後に面白い記事があったので紹介します。
そして、良く一緒にあちこち出かけていた仲間のうちの一人にあるとき日本の政権と選挙について問われた時のこと。
ひととおりの説明をした後、「どこの政党も支持出来ないから、あまり選挙に行かない」と軽い気持ちで言った私に対し、いつもは下ネタジョークばかりの彼が見る見る間に顔を真っ赤にして怒りだし、「市民としての最低限の責任を果たしもしないで、政策の話をするのではない」と強く諭されたことを思い出します。
オランダでは、社会の構成員としてすべきことをして初めて一人前の大人なのです。それから真面目に私が選挙に行くようになったのは言うまでもありません。
こうした市民教育が根付いていて、社会の構成員として果たすべき義務について共有認識をもっている社会。これがオランダの子供の幸せにつながっているのではないかなぁ、と思ったりします。つまり、“親”だけが子供を育てているのではなくて、“社会”が子供を育てているから、子供も社会を信頼してハッピーでいられるのではないかと。
「“親”だけが子供を育てているのではなくて、“社会”が子供を育てている」
オランダの教育について調べていると、この言葉の意味が理解できるのと日本の教育との違いを感じます。
僕なりに見た、オランダの教育制度についてでした。この記事の考えをベースに、これからさらに取材を続け、情報をアップデートしていこうと思います。
では!