「全ては世の中に対する疑問から」ビル起こしから始まった日本での挑戦

これまでの活動の背景には、世の中に対する疑問があった

そう語るのは、新井康陽さん。元々は芸人を志していて、大阪でバーを数店舗経営していたそうです。さらにDJ活動やエステサロン経営などを経て、現在の活動となる「ビル起こし」をしています。

ビル起こしとは「古くなったビルをプロデュースすること」。新井さんは自身がプロデュースしている名古屋のビルでカフェや人が集まるバー、イベントスペースやコワーキングスペースを運営しています。

他にもキングコング西野亮廣さんと対談したり、イベントやフェスをプロデュースしたりと、その活動は多岐にわたります。

世の中の常識やルールに対する疑問を掘り下げていくと、その根本には必ず理由がある。そしてそれに向き合ったときに、新しいビジネスアイディアに繋がることが多い」と語る新井さん。

どのような疑問から、バーをオープンさせ、ビル起こしをすることになったのでしょうか。これまでの新井さんの人生を掘り下げてみました。

「なんとなく就活する」周りの人に対しての疑問

——新井さんのこれまでの活動のきっかけには「世の中に対する疑問」があったとのことですが、最初に抱いた疑問はどのようなものだったんですか?

新井さん:最初の疑問は、大学生のころで周りが就活を始めたときでした。友達に就活を始めた理由を聞いたら、「みんな就活し始めたから、なんとなく」って答えが返ってきたんです。

仕事って、変化はあれどその先の人生でずっとしていくものじゃないですか。それで「体験したことがないものを仕事にしたいと思うのって何でだろう?」と思って。

例えばスポーツだったら、実際にバット握ったりシュートを打ったりっていう体験があって初めて、楽しさを覚えたり好きになったりするものだと思うんです。

そこで大学生活の中だけでなく、頼まれたことや、一緒にやろうと言われて面白そうなことは全部やることにしました。

お笑いしたり、舞台に立ったり、バンドしたり、その経験を通して「シンプルに人を楽しませることが好きなのかな」と思って、お笑い芸人を目指すことにしました。

空いたお店を利用して、資金をほとんどかけずバーをオープン

——でも楽しませることを仕事にしたいって人も多いですよね。しかもお笑い芸人ってその中でも大変そうなイメージがあります。

新井さん:そうですね。お笑い芸人って、ブレイクするまではバイトしないとやっていけないんです。でも売れて忙しくなるとシフトを減らさないといけなくなって、すると店長も素直に応援できなくなってきて。

でもせっかくお笑いやって人を楽しませるのが得意なら、自分でお店経営したらいいんじゃないかって思ったんです。そうしたほうが自分でシフトも組めるので。

——確かにお笑い芸人がやってるお店なら、楽しそうで行きたくなりますね!

新井さん:それでバーをやろうと思って、バー経営についての本を読んだんです。でもその本には「お店の経営には1,000万円くらいかかる」って書いてあって。やたらお店を経営することの大変さがピックアップされていたんです。でも僕は「それって本当なのかな?」と疑問に思って。

24時間営業じゃない限りは、お店ってどこかの時間帯では閉まってるじゃないですか。でも、閉まってる時間だけ使わせてもらって、掃除もしっかりした上で場所代としてお金を渡せば、お店を貸したい人っているんじゃないかって思ったんです。そうしたら新しくお店建てたり改装しなくても、お店を始められるなって思って。

そうしたらちょうど友達の母が居酒屋を開いていたので、交渉してお店を借りることができることになったんです。そうやってバーをオープンさせることができました。

少子高齢化から見える空きビル問題と、その解決法

——なるほど!そのやり方なら、お店を貸す側も借りる側もメリットがありますね。そこから名古屋でビル起こしをすることになったのはどういった経緯だったんですか?

新井さん:そのあと紆余曲折あり、そのバーの運営から退いて、新しくまたバーをオープンさせ、それとは別でカレーの宅配を始めることになったんです。それでカレーのチラシを配りに大阪の街のビルを巡っていたときに、あることに気づきました。

実は大阪って、中心街なのに空きビルがいっぱいあるんです。ミナミという繁華街でも雑居ビルは空きテナントばかりで。

ビルって一度古くなるとテナントが入らなくなって、人も来なくなってという負の連鎖が起こりやすいんです。ビルを持っているだけでも固定資産税がかなりかかるけど、潰して駐車場にするにもかなりお金が必要みたいで。

そんな困っているビルって結構多いんじゃないかなって思ったんです。さらに、いま日本は歴史上類を見ない少子高齢化に陥っています。そうすると人口が減っていって、どんどんそんな空きテナントばかりのビルが増えていく。

だからビルに人を呼んで盛り上げることができれば、ビルオーナーはきっと喜ぶはずだし、需要もあるんじゃないかって。それで、使ってない空きビルをプロデュースしたら面白いんじゃないかって思ったんです。

そんなことを考えていたら、名古屋で空きビルを買ったって人と知り合って。そこで僕の考えを話したら、やろう!って運びになってビル起こしをすることになったんです。そういった流れで、その名古屋の空きビルに「TOLAND」をオープンさせることになりました。

日本には場所を盛り上げるためのプロデューサーが足りない

——そんな背景からビルをプロデュースすることになったんですね。今でも様々なことをしていますが、これからはどんなことをしていきたいですか?

新井さん:上でも話したんですが、今後世の中は少子高齢化が加速して、どんどん人口が少なくなります。すると、それに比例してどんどん場所も余ってると思うんです。大阪のビルみたいに。

だけど、そんな街やビルをプロデュースできるプロデューサーが全然足りてないと思うんです。プロデューサーが増えれば、人口が減ったとしてもその場所に人が循環するので、そこからまた新しいものが生まれるはず。だからそんなプロデューサーを作れるプロデューサーになりたいなと思っていて。

でも日本人って失敗を恐れて行動できない人が多いじゃないですか。だからもっと人がチャレンジできる空間を作っていきたいですね。

そのために、ビル2階のカフェ&バー「TOLAND」では誰でも来れて挑戦ができるコミュニティを作っています。また、そこで本当にしたい仕事と出会えた人が活躍できるように、同じビル内で「minna no kaisha」というコワーキングスペースを運営しているので、これらをもっと盛り上げていきたいです!

おわりに

これまで様々なことに疑問を持ち、それと向き合ってきた新井さん。特に就活についての疑問は、多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。

このインタビューを通して、「常識を疑うこと」の大切さを改めて感じました。新井さんのように、疑問を持つことで自分の理想の生き方やしたいことに気づけるのだと思います。

また新井さんの経営するカフェ&バー「TOLAND」には、様々なバックグラウンドを持つ人が関わっています。多種多様な生き方を知りたい人は、きっとTOLANDに行けばこれまで出会ったことのない生き方をしている人と出会うことができるでしょう。

新井さんのブログはこちら

TOLANDの場所

〒460-0011 愛知県名古屋市中区大須4丁目11−5 2F

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