チャレンジや変わったことをすると叩かれる日本の風潮に、怒りを感じている

 

そう話したのは笠間淳さん。愛知県西尾市にある「NPO法人ONESTEP」を運営しており、ひきこもりの支援をする活動をしています。

笠間さんは、「ひきこもりは天才だ」と主張しています。どのようにしてそのような考えに至り、ひきこもりを支援する活動をするようになったのでしょうか。

ひきこもりから感じる未来の可能性や、NPO法人としての働き方について、笠間さんにインタビューしました。

※厚生労働省では「仕事や学校にゆかず、かつ家族以外の人と交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態(厚生労働省より引用)」をひきこもりと定義しており、この記事でもその定義に沿って話を進めていきます。

不登校の生徒を成長させた経験がひきこもり支援のきっかけに

——笠間さんは学生時代に古着屋で起業し、その中で、なぜひきこもりの支援をしようと思ったんですか?

笠間さん:僕はもともと塾講師をしていたんですが、そのとき受け持った子が不登校だったんです。ある日その子が職員室に来て「学校には行けてないけど、このままはダメなのは分かってる。でもどうしたらいいか分からない」って相談してくれて。

そこで僕はその子が変わるために、いろんな方法を教えてあげたんです。すると最初は内申点が11しかなかった子が、最終的に東大入学者を何人も出している地元のトップ高校に合格できたんですよ。

 

——ビリギャルみたいな話ですね…!すごすぎる…!

笠間さん:そんなことがあったあと、「ニートやひきこもりといった、力を持て余した若者と島おこしをしたい」と言う人と出会ったんです。不登校の子のこともあって、僕もひきこもりってワードに敏感になっていて。

そして彼に誘われる形で、佐久島っていう過疎化が進む島でひきこもりの支援をすることになったんです。

非営利のNPO法人にしたのは、国や大企業とタッグを組むため

——現在は離島でカフェを持ったり、居酒屋を経営しながらNPO法人「ONESTEP」を運営していますが、なぜそのような働き方をしているのですか?NPO法人って非営利だから儲からないのでは…

笠間さん:まず、世の中の仕事って4つに分けられるんですよ。儲かるか儲からないか、あと必要性があるかないか。

例えばライターの仕事って、実際やらないと生活できないとか、すごく困るってわけではないじゃないですか。でも儲かるから、仕事として成り立つ。あとソフトバンクやauなど、インフラの仕事は必要性も高くて儲かる仕事ですね。

僕らがやってるひきこもりの支援や介護など、社会的問題を解決する仕事を「ソーシャルビジネス」と言うんですが、この仕事は必要性は高いけど儲からない仕事です。この仕事がないと彼らは困ってしまいますよね。

でも、彼らは働く意欲があっても働き口は少ないか、そもそも働けないためお金を持っていない。だからサービスの対価を、国が払ってくれるんです。本来は国がする仕事を代わりにしているので。でも国からもらえる支援金には限りがあります。だから、そもそもソーシャルビジネスって儲からないんです。

 

——なるほど。

笠間さん:僕たちは今後、国や大企業とビジネスをしたいと思っていて。NPO法人を取っていると国と連携しやすいんです。大企業と組むにしても、CSR(社会的貢献活動)の一環で、NPO法人と組むことが多いという現状があります。

そういった理由から、ひきこもり支援や島おこしはNPO法人として、飲食店などの収益に関わる事業は株式会社にして、その場に合った法人格を使っています。

ひきこもりは特別な人しかできない、生まれ持った才能である

 

——法人格の使い分けなんてできるんですね…!ところで、笠間さんのブログを見させていただいたのですが、「ひきこもりは才能だ」と書いてあったのがすごく印象的でして。なぜそう思うのでしょうか?

笠間さん:僕がひきこもりに大きな才能を感じる理由は、大きく次の3つです。

 

  • 学校や会社に「行かない」という選択肢をあえて取れること
  • ひきこもれる環境にいること
  • 学校や社会の常識に毒されていないこと

まず、学校や会社って行くのが当たり前という風潮があるじゃないですか。でも本当に行かなきゃいけないんですかね?今だったら、学校以外でも勉強することはできるし、ネットで交流することもできます。

勘違いしてほしくないのは、ちゃんと学校や会社に行ってる人が間違ってるってわけじゃないです。だけど、「行く」選択肢もあれば「行かない」っていう選択肢もあってもいいはず。

世間一般からすると、学校に行かないっていうのは非常識で、ひきこもりとして問題視されますよね。そんな世間を無視した選択肢を取れるってことが、そもそもすごいことだと僕は思っています。

 

——確かに、普通の人じゃひきこもることって難しいですね。世間の目が気になって。

笠間さん:次に、ひきこもりができる環境にあることって凄いことなんですよ。家が裕福でないとひきこもることは不可能なんです。貧しいとひきこもってる余裕もないので。

背が高いとか、足が速いとかっていうのと同じレベルで、家が裕福っていうのは生まれ持ったものなんですよ。

 

——そうか、確かに望んで得られるものじゃないですもんね…!

笠間さん:最後に、学校や社会の常識というものを知らないということは、そこから予想外の発想が生まれる可能性があるんです。これからの時代は常識にとらわれない考え方が必要になってくるはずなので。

だから、「引きこもり」というよりも「魅き隠り」で、彼らには隠されたとんでもない才能が眠っているって僕は思っているんです。特にこのことが、ひきこもりがすごいと思う理由ですね。

ひきこもりが生まれる理由は「教育」にある

——でも、ひきこもりって辛いこととかがあった結果、そうなってしまうじゃないですか。笠間さんは、人がひきこもるようになってしまう大きな原因は何だと思いますか?

笠間さん:僕は、日本の教育がその原因だと思っています。

昔の日本は隊列を乱すものを罰する、出る杭を打つ教育だったんです。でもそのおかげで日本は高度経済成長期を迎えることができたので、昔の教育が悪いというわけではなく。親御さんたちはそれでうまくいったから、自分の子供にも同じ教育をするんですね。

でも、今の時代は昔と状況が全然違う。我慢の対価でお金を稼いでいた時代から、好きなことでないと生きていけない時代になっているのに、昔と同じ教育をする。

実はひきこもりになる人って、責任感がすごく強くて、こだわりも強くて、発想力豊かなんです。以前キャプテンや生徒会長をしていたって人も多くて。

 

——えっ!そうなんですか!!

笠間さん:もちろん、生まれつきの障害があってひきこもりになってしまう人もいます。ここでは、障害を持っていないひきこもりについて話していきますね。

いまの時代に生きるひきこもりたちは、時代にフィットしていない昔の教育を受けてきました。すると自由な発想と、教育によって作られた「常識」という名の枷がぶつかって、葛藤を起こすんです。

彼らは責任感が強いから、「皆がダメということをしてみたい僕はダメなんだ」と自己嫌悪に陥ります。外に出るといろんな発想が浮かんできてしまうから、自分を守るためにひきこもるようになる…という流れですね。

ひきこもりの支援をする先で、誰もがチャレンジできる空気を作りたい

——笠間さんはこのような現状を見て、どのように変えたいと思っていますか?

笠間さん:僕は、教育を変えるための方法は2つあると思っています。1つは学校教育を制度から変えてしまうこと。2つ目は学校の現場を変えること。

学校教育の制度を変えるには、文部科学省が作っている指導要領を改変する必要があります。ただしそのためには、官僚になるか閣議に呼ばれる実績を持つ教授にならないといけなくて…

だから僕は、学校の現場を変える方を狙っています。現場ひとりひとりの意識が変われば、指導要領は同じでもかなり違うと思っていて。

では、どういう人が学校現場に影響力を持っているか。それは学校教育から被害を受けた人、つまり不登校やひきこもりの子なんです。

先生の立場に立ってみると、自分が受け持ったひきこもりの子って忘れられないと思いませんか?少なくとも、あの子を学校に呼び戻せなかったっていう思いはあるはず。そして、そのような子を産んでしまっている学校教育に、100%良いとは思っていないはずなんです。

そこで、僕らがひきこもりの支援をして、彼らが世の中に出て活躍するようになって、学校教育にモノ申す。これが一番効果があると思ってるんです。これを僕は「教育テロ」と呼んでます。

 

——教育テロ…なるほど…!

笠間さん:もちろん、学校教育のおかげで育った人もいます。一方で、不遇な目に合うひきこもりの子もいる。

彼らは、先生が嫌いだから学校に行かないっていう意見がすごく多いんです。だから先生の意識を変えるために一番効果的なのが、ひきこもりが活躍することだと思っています。

もっともひきこもりの支援ですら、僕の目的を果たすための手段の一つなんです。僕はこれまで、さまざまな挑戦をしてきました。しかし、その度に非難を受け続けてきたんです。この国は、新しいことや変わったことをしようとすると叩かれるという空気が強すぎる。

僕はそんな日本の風潮を変えるために、「出る杭は打たれる」っていう言葉を消すために、これからも動いていきます。

変化する時代を生き抜くためにはアップデートし続けなくてはならない

 

笠間さんの言うように、テクノロジーの発達によって昔と今ではまったく違う時代になりました。これから先も5Gの登場や、人口知能が人間を超えるシンギュラリティなど、どんどん時代は変化していくでしょう。

そんな時代を生きていくためには、自分自身はもちろん、旧来からの制度や常識もアップデートしていく必要があるのではないでしょうか。

すでに変化は始まっており、オーストラリアにはアプリ制作で月4,000万円を稼ぐ中学生もいるそうです。もしかして、将来は常識に縛られず自由な発想をする「魅き隠り」が、時代を引っ張っていく存在になっていくのかもしれませんね。

笠間さんのブログはこちら

この記事をかいた人

名古屋市在住、フリーのWebライター。お金やカメラについての記事も執筆しています。DJダイノジの地方チーム「ジャイコナイトナゴヤ」のDJとしても活動中。