こんにちは、ウェブライターのハルノ(@haruno_sudo)です!
海外の大都市を旅していると、皆さんも気づいたことがあると思います。「バスキングで生計を立てている人」の多さに!
バスキングとは「路上でパフォーマンスを行い、投げ銭を集めること」を意味します。
旅をしていると、自分と同じような旅人が路上で楽器を演奏したり、写真や絵を売ったり、大道芸をやっているのを見かけることがあるでしょう。
旅をもっと自分流の楽しいものにすることができ、さらにお金を稼ぐことができるこのバスキング。アーティストなら誰もがやってみたい旅の方法の一つ。
そこで私は疑問に思ったことがあります。チップを集めるこのバスキングは、IT化が進みキャッシュレス社会になるとともに、淘汰されていくのでは?
現金を投げ入れることでそれがチップとなり、アーティストの稼ぎとなる。ということは、現金が使用されなくなったら必然的にバスキングを行うことも不可能になるのではないか、と。
しかしそんな仮説に一石を投じてくれた方がいらっしゃいます。
ギターを片手にユーラシア大陸を横断、ギタリストの山下恭平さん(@kyoheyls)です。
(出典:山下恭平さんtwitter)
彼はハイパーキャッシュレス社会とも言われる、北欧スウェーデンでバスキングを成功。1日3時間の演奏を行い約4000円、1か月で約10万円稼いだという実績があるのです。
参考:日本人ギタリストがスウェーデンで路上ライブ毎日やったら1ヶ月でこんだけ稼げたよ/Tatsumaru Times
使用したものはギター1本。アンプもマイクも無しで挑んだバスキングでしたが、結果ヨーロッパ約100日の旅行を通し、チップだけで約25万円を稼いだそうです。
今回はそんな山下さんに、
・ヨーロッパでのバスキング成功の秘訣
・キャッシュレス社会でのバスキングの未来
を取材してきました!IT化が進んだスウェーデン社会にも注目です!
ギタリスト山下恭平さんとユーラシア大陸横断の旅
まずは、今回インタビューさせて頂いた山下恭平さんと、ユーラシア大陸を横断した旅について簡単に紹介させて頂きます。
大学在学中より都内を中心に、本格的な音楽活動をしていた。
現在は地元である京都府舞鶴市を拠点に、全国を駆け巡りライブをすることで音楽を提供し続けている。
「シベリア鉄道に乗っかって北欧入りをし、スウェーデンからポルトガルのラゴスまでを空路を使わず横断する」というのが今回の旅だったそうです。
ハルノ:ヨーロッパでの出来事を、ツイートや記事で拝見しておりましたので、今回山下さんにお会いできるのを楽しみにしておりました!早速ですが、ヨーロッパでバスキングを成功した秘訣を教えてください。
山下さん:やっぱり単純に音楽を奏でているだけでは、バスキングで稼ぐことは難しいです。たくさんの人がバスキングしている中で、自分の音楽を聴いてもらうために、いろいろ実験しながら、試行錯誤することは大事だと思います。
バスキングで稼ぐには試行錯誤とマーケティングが必要
ハルノ:海外では公園とかに行くと、いろんなジャンルのアートを路上で披露している人をみますよね。やっぱり、そこで差別化を付けるのは難しいってことですか?
山下さん:そうですね。スペインはギター弾ける人が多いですし、差別化をするのに苦労しますね。今回の旅では特にスペインとフランスでは、あまり稼げなかった印象があります。
ハルノ:反対にどこの国だと稼ぐことができたと感じましたか?
山下さん:ドイツなどのチップ文化があるところの方が稼ぎやすいっていうのはありますね。あとポーランドとか東欧。バカンス真っただ中の東欧の観光地は狙い目かもしれません。
ポーランドの首都のワルシャワでは、1時間に7000円ほど稼いだこともあります。
ハルノ:7000円!すごいですね!
山下さん:バスキングを行うときは
・どこで歌うのか
・どの時間帯で歌うのか
・どの世代に向かって歌うのか
・どの国籍の人に向かって歌うのか
といったことを模索しながらやっていました。例えば、夕方の人が集まる公園とかだと立ち止まってくれる人も圧倒的に多いですが、パフォーマーも多いんです。
そのため、自分の音が響くように、あえて路地裏に行くなど工夫しました。
ハルノ:ただ人が多いところに行けばいいというわけではないのですね。
山下さん:そうですね。やっぱり聴いてくれている世代の人が知ってそうな曲を歌うことは大事ですね。
周りが盛り上がってくることで、自分も楽しくなってくるし、自分が楽しくなることで自分らしさが出てくる。
自分の音楽を海外でもやりたいと思う方は、まずはオリジナルの曲にこだわらないことがポイントです。
聴き手の反応を探り音楽を楽しむ雰囲気づくり
ハルノ:ヨーロッパでウケた曲ってどんなのがありましたか?
山下さん:定番で言ったら、ビートルズとかレッドホットチリペッパーズなど。世代問わずウケました。聴いてくれる人とコミュニケーションを取ることも重要です。通行人の反応を観察することで、曲のレパートリーを増やしたりもしました。
リクエストした曲をやることで、演奏の場が交流の場になるような、皆が音楽を楽しむことができるような、雰囲気を作ることも重要ですね。
例えば、スタンドバイミーをその場にいるみんなで歌ったり、Amy Winehouse(エイミー・ワインハウス)をリクエストされてコピーさせられたり…。邦楽だったら、秦基博さんの鱗をやって!と言われました。
ハルノ:コミュニケーションを取りながら演奏するのが大事なんですね。それにしても秦基博さんの鱗はちょっと意外でした…!
山下さん:リクエストされたときは「サカナやって!サカナ!」って言われたんですけどね(笑)
IT化されたスウェーデンでのバスキング
ハルノ:ヨーロッパでのバスキングについて聞いてきましたが、今度はスウェーデンでのバスキングについて教えてください。そもそもスウェーデンって現金はもうあまり使われてない、金融においてIT化が進んだ国だとお聞きしました。
(引用:世界で加速する「キャッシュレス革命」/PRESIDENT Online )
このようにスウェーデンでは、現金を使用する人はほとんどいません。それに従い、現金が使用できないショップやレストランも多く、鉄道やバスでの交通機関でも、現金以外ですべて完結させるそう。
現金を利用しないスウェーデンでのバスキングは観光客を狙う
ハルノ:これだけキャッシュレスが進んでいるスウェーデンでは、現金を投げてもらうバスキングは、やっぱり難しいですよね。そもそもみんな現金を持っていないという印象ですが・・・。
山下さん:そうですね。スウェーデン人に向けて演奏していたらバスキングで稼ぐことが出来なかったと思います。そのため、観光客を狙って演奏するようにしました。
観光客だと現金を持っているため、紙幣やコインを投げ入れてくれる人も多かったです。たまに外貨が飛んでくることも。現金を持っていない人でも、チップとしてランチをくれたりパンをくれたりすることもありました。
ハルノ:なるほど。スウェーデンにいるからといって聴いてくれる方は、スウェーデン人とは限らないですからね。
山下さん:演奏するだけでなくて、自分の前に紹介ボードを立てかけて、この先の自分の旅路をここに書いておくんです。
そうすると、通りがかった観光客の人がその国出身だったりすると興味を持ってもらえたりします。通りかかったドイツ人が、ドイツに来たときはビール飲もうって名刺をくれたりもしました。
ハルノ:そういう出会いもバスキングを通してあるんですね!
スウェーデン人のバスキングはITを駆使した決算システムで
山下さん:スウェーデン人でバスキングをしている人は、ボードにマイナンバーのような自分の電話番号を書いておくんです。そうすると、スウェーデン人はSwish(スウィッシュ)というアプリを通してその人の口座にチップを入れることもできるんですよ。
ハルノ:ITを駆使した、新しいチップの入れ方ですね!
(引用:世界で加速する「キャッシュレス革命」/PRESIDENT Online )
山下さん:スウェーデンの口座を持っていなかった自分はこの手段を取ることはできませんでしたが、キャッシュレス社会ならではの方法だと思います。
こんな感じで、キャッシュレスになるだけで、現金を持ち歩く手間が省けるだけでなく、手数料が安くなったり色々メリットがあるのはいいですよね。議論が進みづらい日本ではまだまだ導入は難しそうですが。
日本でくすぶっているアーティストよ!旅にでなさい
今回のインタビューで分かった、ヨーロッパでのバスキングを成功させた秘訣は、
・他のアーティストとの差別化を図る
・観客とコミュニケーションを取り音楽を楽しむ雰囲気を作る
またハイパーキャッシュレス社会のスウェーデンでは、観光客を狙ったバスキングを行ったことがチップをもらえることにつながったそうです。
IT化が進んだスウェーデンでは、新しい決算システムがチップに導入されていたのも印象的でした。
ハルノ:最後に今、日本でアーティスト活動をしている日本人に何か一言お願いします!
山下さん:日本でくすぶっているアーティストは、一度ヨーロッパに行ってみるべき。海外では下手な人でもとにかく路上に出てバスキングしているので、日本人でちゃんとアーティスト活動している人ならきっと成功できるはず。
また、バスキングは稼ぐということだけではなく、自分が誰かに生かされているということへの感謝を感じることが出来ます。旅とバスキングをすることで、そのことが一瞬一瞬で感じられるはず。皆さん、旅に出ましょう!
ハルノ:人との関わりを見出すことができるのも旅の醍醐味ですね、山下さんありがとうございました!