「フリーランスはキラキラしていなかった」パラレルキャリアを実践するデザイナーが見つけた自分に合った働き方

フリーランスになって好きなことを仕事にする!

最近、そんな声をよく聞きませんか?

「フリーランスなら、好きな場所で好きな人と好きな仕事ができる」というイメージを持っている方もいると思います。

でも、それだけが「好きなことを仕事にする方法」なのでしょうか。

今回取材させていただいたデザイナーの目黒水海さんは会社員からフリーランスの転身を経て、現在は会社員とフリーのデザイナーのパラレルキャリアで活躍しています。

「今の働き方が1番自分に合っている」と語る目黒さんに会社員、フリーランス、パラレルキャリア、それぞれの働き方について伺ってきました。

自分が作ったデザインを発信したくて副業禁止の会社を退社。オンラインサロンをキッカケにフリーランスへ


——目黒さんは会社員からフリーランスに転身した経験があるとのことですが、その経緯を教えてください。

目黒:フリーランスのデザイナーになったのは2017年の12月ですが、当時はSNSで「個人が活躍する時代」とすごく言われていました。

フリーランスとして活動するデザイナーさんたちが自分でデザインしたものをSNSで発信していましたが、わたしの働いていた会社では副業もSNSでの発信も禁止されていたんです。

SNSを見ているうちに「わたしも自分がデザインしたものを発信したい!」という想いが高まり、勢いで会社を辞めたんです。フリーランスへの憧れはありましたが、違う会社に転職するつもりでした。

そんなときにキングコング西野亮廣さんのオンラインサロンで、デザインのお仕事をいただくことができたんです。

お仕事をもらうきっかけになったレターポットの解説画像の一部

それがキッカケとなってサロン仲間や出会った人からもお仕事をいただくことができるようになり、会社には属さずにフリーランスのデザイナーになりました。

目黒さんのインスタグラムから

苦手なモチベーション管理や自己肯定感との戦い…。フリーランスはキラキラしていなかった

——実際にフリーランスのデザイナーになってから感じたことはありますか?

目黒:会社員のとき、「フリーランスは自由で好きなことを仕事にできる」「タレントのように自分を仕事にして目立つことができる」といったキラキラしたイメージがあったのですが、そんなことはありませんでした。

好きなデザインの仕事だけではなく、苦手なモチベーション管理やお金周りのこと、成長の機会を作るのも全部自分でやらなきゃいけないんですよね。

オンラインサロンなどのコミュニティに顔を出していたので、興味のあることはやらせてもらうことができましたが、誰もデザインについてのアドバイスはくれないので常に自己肯定感との戦いでした。

——SNSだと特に、フリーランスは好きなことを仕事にしているキラキラした部分に目がいきがちですよね…。会社員とフリーランスのそれぞれの魅力や大変なところを教えてください。

目黒:会社員は安定した収入が得られるし、自分一人ではできない規模のことができるのが強みですね。働き方が自由な会社は増えましたが、どうしても時間や場所の制約があったり、興味のない分野の仕事を任される可能性もあります。

反対にフリーランスはいつでもどこでも働けるし、「自分のやりたいことを仕事にしよう」と思えることが魅力ですよね。

でも収入が不安定だからどうしてもお金のために受ける仕事もあったし、メンタルが不安定になったときもありました。ロゴデザインなどの単発の仕事が多いと、「今月は稼げたけど、来月の収入の目処が立たない」という可能性もあります。

フリーランスの限界を感じ、大好きなVoicyに入社してパラレルキャリアのスタート

——フリーランスとしての活動期間を経て、再び会社員になられた経緯を教えてください。

目黒:デザインという好きな仕事をして相手が喜んでくれても、「わたしはもっとできた気がするのに、どう改善すればいいかわからない」というモヤモヤした気持ちがありました。

せっかくお仕事は貰えるのに自分の作業量が追いつかなくなってしまったり、相手と仕事への温度感が合わせずにへこんだりして、フリーランスとしての限界を感じていたんです。

そんなときにお手伝いをさせてもらっていた、「Voicy」という音声メディアサービス会社の緒方社長から「一緒に働かないか」と声をかけていただいて、8月末に入社しました。

Voicyはもともとよく聴いてる大好きなサービスだったので、嬉しかったです。

再び会社員になりましたが、フリーランスの時期にたくさん出会いがあったり素敵な仕事ができたので、経験してよかったと思っています。

——フリーランスは好きなことだけできるわけではないんですね…。最初にいた会社と今の会社(Voicy)の違いはどのようなところですか?

目黒:やっぱり発信や個人の仕事もできるところですね。

入社前からVoicyのオンラインサロンの立ち上げに携わっていたり、はあちゅうさんのオンラインサロンでの活動など、わたしの自己発信を見た上で声をかけていただいたので会社の人や周りを気にせずに発信できますね。

わたしの発信したことがVoicyというサービスを知ってもらうきっかけになったり、個人の仕事に繋がったりするのも嬉しいです。

はあちゅうサロンOB向けのオンラインサロンのバナー

働き方は会社員かフリーランスだけじゃない。自分にとって大切なものを大事にできる方法を開拓してほしい

——今は会社員とフリーのデザイナーとして活躍されている目黒さんが思う、パラレルキャリアの良さはどんなところですか?

目黒:会社からの安定した収入が約束されているので、個人の仕事で「すぐにお金にはならないかもしれないけど、やりたいこと」にチャレンジしやすくなったことですね。

会社でしかできないことも、個人でやってみたいことにもチャレンジできるという今の環境は、かなりわたしに向いていると思います。

女性向けお酒メディアでWEBデザインを担当

「フリーランス」という言葉の響きに憧れたり、「好きなことや自分を仕事にしたい」という気持ちはすごくわかります。でもなんとなくのイメージでフリーランスに憧れている人には、「フリーランスは好きなことだけではなく、やりたくないことも仕事になる可能性があること」「会社員でも好きなことを仕事にできる」ということを知ってほしいですね。

働き方の選択肢は、フリーランスか会社員の2つだけじゃないんです。

自分の生活に大切なものを考えて、それを一番大事にできる働き方をいろいろ試して開拓できたらいいと思います。

——では最後に、目黒さんが今後やりたいことを教えてください。

目黒:これからも会社の仕事と、個人の仕事を両立させていきたいですね。今は「コミュニティデザイン」にも興味があって、人の感情や行動を動かすような「場づくり」や、リアルイベントも作りたいと思っています。

最初にいた会社もロゴからお店の内装のデザインまでやるブランディングデザインの会社だったので、会社や働き方が変わっても仕事内容は繋がっているんですよね。

最終的にはロゴやWeb、イベントなどを通してその人たちの良さや伝えたいことが滲み出てくるような世界観のあるブランドを作るデザイナーになりたいので、イベントやコミュニティに参加するなどいろいろなことにチャレンジしています。

取材を終えて

わたしもまさに「会社員を辞めてフリーランスになりたい」と考えている1人でした。

周りにフリーランスとして活躍する人が増えて「早く独立したい」と焦る気持ちもありましたが、「好きな仕事をする手段はフリーランスだけじゃないんだ」と改めて気づきました。

会社員でしかできないことも経験しつつ、個人で好きなことや興味のあることにチャレンジできる目黒さんの働き方は、理想的な働き方なのかもしれないなと思います。

会社員もフリーランスもひとつの手段であり、自分が何をしたいのか、何を大事にしたいのかをきちんと考えていきたいです。

目黒水海さんのTwitter:@minamimag

>これまでのインタビュー記事はこちら

Photo by takumi YANO