消費されない時代を超える文章を

なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」などの著書で知られる山口揚平さん。

実業家・思想家として幅広く活動している方ですが、最新書籍も多くの人が面白いと呟いてます。労働の次に来るのは「思考」だと。

山口さんのアウトプットがいちいち面白いのでFacebookフォロー推奨です。

例えば最近の投稿だとこれが面白かったです。見やすくするために勝手に改行と段落を振りました。

1)人間の最大の強みは「習慣と信頼だ!」と言ったのは伊坂幸太郎(「ゴールデンスランバー」より)だが、いやはやその通りではあるものの、一方で習慣ほど厄介なものもない。令和に変わるタイミングで我々には変えるべき習慣がある。僕の場合はコーヒーに砂糖を入れる習慣とかだ。人生は苦い、コーヒーくらいは甘くてもいいじゃないか、はもう健康上通用しない。コーヒーの依存性はコカインの8倍だとか。

2)さて、本題だが、お金についてはほぼ習慣が全てだ。お金の専門家として僕自身持っている習慣としては、

1.洋服など高いものを買う時、一回で買うのは1つまで
2.一回見てすぐ決めず2回目で決める
3.3つ以上を見比べる

という習慣がある(1,2,3の習慣)。他にも

・Amazonでワンクリックでは買わず、カートで最低3日は眠らせ、3つ以上のものをセットで買う

というものだ。これで無駄な買い物が減り月に5000円以上コストが減る(Amazonのダンボールの山を防ぐ効果もある)。

・タクシーは2500円の距離まで、片道しか使わない(行きか帰りは電車)
・人にお金でものを頼む時は、まず希望額を聞いて20%増しにする(やる気、生産性は1.5〜2倍になる)

まだまだたくさんあるがこれらは小さいことだ。

3)もっとも大きなことは、お金の報酬について単月や単年で考えないということ。例えば月収を気にしたことはない。年収もどうでもいいと思っているし、実際、ゼロや赤字の月、年もある(貯金を食いつぶしてひもじい思いもする)。しかし最低2〜5年でいくら稼ぎあげるか、にしか興味がない。それはつまりひとつの事業なり本なり、長期のプロジェクトを成し遂げてその報酬(多くは株式収益・再生成功報酬など)を得るということだ。起業家なら皆そう考えているはずだ。だから結婚相手に年収を聞くのは事業家相手には意味がない。純資産が全てである。イェール大の調査でわかったことは、結局、成功するか否かを決めるのは、その人がどれだけ長期で物事を考えるかだけだ、ということだ。

4)昭和はコンストラクションの時代だった、平成はオペレーションだった。では令和は?当然、イノベーションだ。全ての領域でアップデートが必要だ。車産業はロボティクス産業へ。医療(病気というマイナスをゼロへ)業界は、健康力(人間のエネルギーをイチから100へ)へと転換する。官製民主主義はコミュニティ産業へがらりと変わる。それは「月給」の次元で考えるものではない。何年もの長期プロジェクトでなければならない。ベーシックインカムを僕が肯定するならば理由はひとつ、人々が日々の生活費の不安を忘れて長期で物事を考えられるようになるという一点につきる。人は習慣の奴隷である。平成のオペレーション時代、僕たちの視座はいつも短期だった。変えるべき習慣はただひとつ、物事を見る時間軸の長さである。

このFacebookの一投稿を見ただけで、一冊の本を読んだかのように気持ちになるくらい面白いです。

それはおそらく、思考の抽象度と言葉選びが程よく難解だからこそ、何度も考えることで得られた知識の満足感が高いのでしょう。何度も咀嚼してアウトプットしたくなります。

2の「習慣の実例」も超参考になるし、3の「月収と年収の無意味さ」も面白いし、結論も納得がいく。全ての段落に学びがあるハイコンテクストっぷり。

また文章の組み立て方自体も非常に上手く、分かりやすく段落分けすると、この投稿は4段落に分けられます。投稿のメインテーマは「物事を見る時間軸の長さを変えよう(短期視点から長期視点へ)」です。

しかし、こんな見るからに難しそうな話、いきなりぶつけたところで誰も読んでくれないでしょう(てか理解さない)

だから分かりやすい導入を作るために、「人間の最大の強みは習慣と信頼だ!」「人は習慣の奴隷である」という話から入ってます。しかも2は「お金の習慣」というみんな確実に興味のある話を実例として出していて、実際僕も惹きつけられてしまいました。

これがいわゆる読者を引きずり込む“リード”と呼ばれる部分。映画も小説もなんでも、まずリードがどれだけ面白いかが鍵になります。

さらにほぼ全てに、根拠となる理由や実績を加えてます。

  • 習慣と信頼だ!と言ったのは伊坂幸太郎だが
  • コーヒーの依存性はコカインの8倍
  • イェール大の調査でわかったことは、結局、成功するか否かを決めるのは、その人がどれだけ長期で物事を考えるかだけだ

もちろんちゃんとした出典を自分で調べるのがベストなんだけど、人間は根拠に基づいた説明に説得力を感じて惹きつけられる。流れをまとめると

  1. 人間の最大の強みは習慣と信頼だ
  2. 自分の習慣の実例紹介
  3. (お金の話をしつつも)長期で物事を考えることが大切
  4. (時代背景を踏まえつつ)変えるべき習慣は物事を見る時間軸の長さ

という作りになっています。

内容もさることながら、読まれる話の作り方も勉強になります。

しかも本人はあえてこの「読ませるテクニック」を匂わせないために改行・段落入れをしてないのかなぁとも推測してしまいます

分かりやす過ぎる文章は危険

文章は分かりやす過ぎると、それを読み解ける人だけが集まってきたり、消費が早くなります。

そういう意味では、140文字という制限があるTwitterは拡散力はあれど、深い文章を届けるのは難しい…。

分かりやすいコンテンツばかり作っていると消費がどうしても早まってしまいます。咀嚼がないからです。だから、インスタ映えも一過性のブームで終焉を迎えようとしてます。

インターネットで色んなものが分かりやすくなってしまったせいで、ありとあらゆる弊害が生まれているような気がしていて(もちろん良いこともたくさんあるんだけど)、ここらへんのバランスをどう取っていくかが、この世界で長く活動する鍵だと思う。

宇野さんの「遅いインターネット」もそういった意味で面白かったですね。

書評「遅いインターネット」僕たちはもうバズを狙ってはいけない

結論、人生って難しいぜ…!

僕はここ3年、ブログやTwitterを「分かりやすく」発信した結果フォロワーさんはめちゃくちゃ増えたものの、超絶疲れたし、幸福度の上限値に限界を感じたので、一旦SNS上のスピード感を落とそうと思ってます。だって時代を超えるコンテンツを作りたいから…。

作者が亡くなっても、書いた文章は時代を超えて残るため、僕たちが読書をする時は「過去とつながりたい」と思いながら本を読み、そして文章を書く時には「未来へつながりたい」という想いを抱いて筆を取るものですが、現在はとにかく質の低い文章が大量生産されているため、その場で読み捨てられ、忘れ去られて、人間の最大の欲求である「時代を超えた人たちと繋がりたい」という概念が急速に衰え始めています。(4)

出典:アマゾンCEO「ブロガーがこんな記事を書いたら飢え死にするぞ。」