映画評「愛のコリーダ」芸術か、わいせつか

故大島渚監督の「愛のコリーダ」が4Kで劇場上映していたので観てきました。

邦画史上初俳優に「本番行為」をやらせ、芸術かわいせつか、裁判沙汰にまで発展した問題作です(検閲を掻い潜るためフィルムのまま輸送しフランスで編集した)

1936年に愛人のアソコを切断し、時の人となってしまった実在人物「阿部定」をモチーフとしています。この話、高校生くらいの時Wikipediaで読んでゾッとしたよ…。

映画の7割方セックスしてるんですが(局部はモザイク入ってるがフランスでは無修正で公開され大ヒット)、全然いやらしさは感じず、赤を基調とした画面構成や、それはまた、最後の「アソコの切断」へ向かうメタファーにもなっているなど、構図と世界観が信じられないほど美しく成立しています。

坂口安吾と阿部定の対談がめちゃくちゃ面白い

刑期を終え出所した阿部定と、「堕落論」などでお馴染みの坂口安吾との対談が興味深いんです。愛するあまり愛人を殺してしまい、さらにアソコまで切断した阿部定がこんなことを言ってるんです。

「今でも、あんなことしなきゃよかったかしらん、と思うけども、やっぱし、そうでしょうね。ちっとも後悔してないんです。死んだ人に悪いけどもネ。」

出展:阿部定さんの印象

自分は愛人止まりで、他の人への嫉妬が苦しくてしょうがなかったのでしょうか。

そういう意味で、本当に自分は誰かを激しく愛したことがあるのだろうか。

本物の映画とは何か

大島渚と言えば「戦場のメリークリスマス」ですが、この予告動画が素晴らしすぎて(特に冒頭の顔のところ)、最近の予告は説明が多すぎです。これくらいシンプルでいいと思う。

作品自体も説明がかなり削ぎ落とされているので、観た人によって評価がキッパリ分かれる映画です。だけど、自分はそういう映画こそ映画(というか芸術)だと思ってます。

「泣ける映画」「笑える映画」という謳い文句がつきがちですが、観客がその通りの反応をするものは「ポルノ」ですよね。冒頭で紹介した愛のコリーダも、芸術か、わいせつか、議論を巻き起こし「わいせつ、なぜ悪い」と言い放った大島渚の言葉は大きなインパクトを残しました。

それを、商業的に成功を収めなければいけないジレンマの中で作る人たちは本当にカッコいいです。

関係ないけど「火垂るの墓」作者、野坂昭如との殴り合い動画、けっこう好き。