興味深い本を見つけたのでシェアします。
ラッセンとは何だったのか? 消費とア-トを越えた「先」 /フィルムア-ト社/原田裕規
バブル期に日本で爆発的に支持されたクリスチャン・ラッセン。
本業はサーファーで、ハワイの海をテーマにした幻想的な絵は見たことある人多いんじゃないかと思います。パズルにもよくなってる。
いわゆる一般大衆(アートに精通していない人)をメイン顧客として販売されたわけですが、ア○ウェイまがいの売り方など(絵画商法と言われるもの)に、今でもアートの潮流にいる人からはアートとして認められていません。日本人だとヒロ・ヤマガタも、同じ形でカテゴライズされてます。
具体的には
- 版画やシルクスクリーンを相場を超えた高額な値段で販売していた(数百万円とか)
- なのに印刷部数は多かった(多い時は3000部、刷りすぎ笑)
- 街中で「ちょっと展示会見ていきませんか?」と美人スカウトマンが声をかけ、その後ローン組まされたり、購入するまで帰してもらえなかったとか
美術作品というよりイラストアート?を「アート」として高額で販売していた感じなのかなぁ。
後にこういった作品は手ごろな値段で買える「インテリアアート」とカテゴライズされ、日本がアート後進国になったひとつの原因を作ったとも言われてます。
数百万円で購入されたラッセンの絵は、現在二次市場で高額で取引されてません。
何事もですが、つくづく「高額でたくさん売れれば良い」というわけではないことが分かります。
またこういう言い方アレですが、売る相手も超大事です。
美術の教養がない人相手に販売していたために、一気に消費されて廃れた感あります。
批評性がないというか、美術史と接続できないと言いますか。
一方で「ラッセンは日本でめちゃくちゃ売れていた」というのは紛れもない事実です。美術界から黙殺された作家ですが、色々考えさせられます。ラッセンという過去の現象自体が問いを投げかけてます。
今日もラッセンは,サーフィンをして,イルカと遊んで,大好きな絵を描いて暮らしている.都会のゴッサム美術界隈など歯牙にもかけずに.
— / ヒカル (@NOZAWAHikaru) December 21, 2021
個人的に大山エンリコイサムさんの章、ラッセンが現代美術の文脈で評価された40年後の日本を仮想とした文章がおもしろかったです。