書評「サザビーズで朝食を」アーティストは芸術神話の重要な役割を担っている

今日、本屋で見つけた本に食い入るように見入ってしまいました。

アーティストという職業は当時も修羅の道だった

アーティストと聞くと「それだけで食べていくのが難しい」とか「自由奔放に生きている」、「酒と女!!」みたいなイメージあると思うんですが(偏見)

「アーティストというのはとにかく普通の人とは違った生活を送っている」ということは十四世紀からすでに書物に記されていたそうです。「叫び」でお馴染みのムンクの父親は「芸術家になるなんぞ、売春宿で暮らすようなもんだ」と語ったそうな。

19世紀にロマン主義がたかまる連れて花開いた「ボヘミアニズム(自由奔放主義)」は、当時のアーティストに与えられた役割でした。

気ままにやることを変え、酒をあおり、ドラッグとセックスをする。そんな生活をしなければ孤独に潰されてしまう者、むしろそうすることで創造性が高まると信じる者などさまざまでした。

自分としては、快楽や何にも縛られない自由と、生活費を稼ぐために資本主義に取り込まれることの葛藤で戦うのがアーティストの宿命であり、それは過去も未来も変わらないのだと解釈しました。

1843年に「ボヘミアンの生活の情景」を書いたフランスの小説家アンリ・ミュルジェールは「ボヘミアとは芸術家の人生の一段階」と述べます。それは「アカデミーへの、神の家と呼ばれる貧民救済病院への、あるいはモルグ(死体置き場)への入り口だ」と語った。そして、ボヘミアの出口は、ブルジョワに衝撃を与えるような作品を作ること。つまり買われること。それか、アーティストとしての信条を曲げてアカデミーに入ること。もしくは、結婚して子供を作ること。

ちなみに産業やブルジョワ的価値観に汚染されず、原始的な生活を追い求めたという点で究極のボヘミアンはゴーギャンだったという話も興味深かったです。

「アートの民主化」がたまに話題に上がりますが、これは常に考えさせられる問題です。

それついて筆者は、ボヘミアンとしてのアーティストは芸術神話の重要な役割を担っていると述べます。

なぜなら芸術は、どこか神秘的で魅惑的なものであって、だからこそ、高価な値段が付けられます。

だから創造者として、一般人との間に境界を定めなければいけません。そのために、人と異なる姿を装い、振る舞う必要があると。

これは、紛れもない事実だと思います。サザビースのディレクターが35年も美術業界を見てきて感じたことなどで、妙に説得力があります。オススメです。