FIREブームに思うこと…多くの人は憧れの「自由」に殺される

「自由」という最も厄介なものに捕まった男、プロ無職るってぃです(詳しくは前回の記事で)

人一倍自由について考えてると思いますが、こんな生き方をしているのでLINE@とかイベントで死ぬほど質問されます。

確かに今の僕の生活は、毎日通わなければいけない場所もなければ、何時に起きなきゃとかもないし、養わなければいけない家族もいません。

行こうと思えば今日この瞬間海外に行けますし、どこでも仕事できるし、付き合う人も選べます。怒られることもありません。

「じゃあ、めっちゃ幸せか?」と聞かれると、「100%幸せ」とは言い切れません。

最近巷で「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」という言葉をよく聞きますが、なぜFIREを目指そうというトレンドが生まれたのか、その背景が気になります。自由というものは取り扱いが難しく、厄介です。

西洋的自由=束縛や抑圧からの解放(みんなこれ求めてる)

西洋的な「自由」、すなわちフリーダム(Freedom)やリバティ(Liberty)には自由の儀はなく、束縛や抑圧からの解放を意味します。

アメリカはイギリスから支配を受けて独立を果たしましたし、帝国主義時代は支配して解放を目指して…を繰り返してました。

そして思うに、平成の時代にみんなが追い求めた自由はこのフリーダムやリバティの方の自由だったように感じます。つまらない会社を辞めたい、好きなことを仕事にしたい、海外を旅しながら働きたい、とか。

ただ前述したように、この自由を得たところで幸福は長く続きません。

これは僕自身もそうでしたし、周りのフリーランスを見てても明らかです。人間は本能的に社会貢献欲がある生き物なので、場所や束縛から解放されて自由を得たところであまり変化はありません。というか、本来人間はみな生まれた状態はフリーダムでしたから。

たくさんお金を稼いでリゾート地に引っ越してリタイア生活…よく聞く「憧れのライフスタイル」ですが、多くの人は精神を病んでしまうのです。結果、お金に困ってなくてもアルバイトをし始めたりします。

自由の身から、自ら束縛の道を選ぶという、ミシェル・フーコーの「自発的服従」を思い出します。FIREブームに喝を!!

「好きなことで生きていく」の本当の意味

歴史から見た「自由がもたらした悲惨」

こちらの本から事例を紹介します。

市民が封建制度からなる奴隷から解放されたのは16世紀から18世紀にかけて。多大な犠牲を払って市民は自由を得ました。

しかし多くの代償を払ってまで自由を得たのに、その自由を捨ててナチス・ドイツの全体主義に多くの人が傾倒したのでしょうか。それは、孤独と責任が伴う自由に疲れてしまったのかもしれません。「もう、誰か統率してくれ」みたいな。そしてこの辛さと気持ちは僕もよく分かります。

あまりにも毎日自由すぎるゆえに、誰かにスケジュール管理されたり、予定や仕事を入れて欲しくなるんですね。つまり「管理されたい」という欲が生まれます。

ちなみにナチズムの中心支持者は、小さな商店主、職人、ホワイトカラー労働者だったそうです。

また、エーリッヒ・フロムは自由を逃れ権威に盲信することを選んだ人々に共通する性格を指摘しました。それは権威に従うことを好む一方で、他方では自ら権威であたりいと願い、他のものを服従させたい人です。つまり、自分より上の人には媚びへつらい、下のものには威張る性格の人だと。

戦争はいつの時代も、自由をただ追い求める教養なき市民と、そういった大衆心理をうまく掴んだ指導者によって繰り返されます。よくヒトラーやポルポトといった独裁者だけを非難しがちですが、彼らを選んだのは僕ら市民ですし、ホローコーストを自らの手で行ったのも僕ら市民ということを忘れてはいけません。

本当の自由を得るためには「教養」が必要

「SNSで稼いで自由を」とか「自由に生きよう」とか、一色単に「自由を良いもの」として押し付けるのは無責任のように感じます。

ギリシャ・ローマ時代、人々は「奴隷」と「奴隷じゃない人」の2種類に分けられました。そして、奴隷じゃない側にいるために、つまり自由を得るために(自由でい続けるために)最低限これは学びなさいよ、ということで生まれたのがリベラル・アーツです。

リベラル・アーツとは、文法学・修辞学・論理学の3学、算術・幾何・天文学・音楽の4科で構成された自由七科です。つまり、自由を得るためには教養や知識が必要というわけです。そして、なぜ自由を得るには教養が必要なのか。

それは「問い続けること」こそ、自分の身を守り、自由でいつづける方法だからです。

常識を疑わず盲信的に権威に従属することは、自らの自由を奪われるだけでなく、先ほど紹介したような悲劇が繰り返されます。

平成が肉体的な自由をみな求めたのだとしたら、令和は、精神的な自由がキーになるのでは、と思ってます。そのためには教養を磨かなければいけません。