前後の文脈を知って2011年の鳥人間コンテストにえらく感動した話

昨日なぜか2011年の鳥人間コンテストで話題になった選手のことを思い出していました。有名な動画なので知ってる人も多いと思います。

クソっ・・・GPSが切れたら・・・俺は運転もできないのかよ・・・

悪いね・・・ヘボパイロットで・・・・エンジンだけは・・・一流のところを見せてやる。

俺の人生は・・・・晴れ時々大荒れ・・・イイねっ!! いい人生だよ!!

などの中二病的発言が話題となり、当時大学生だった僕もエンタメ動画として笑っていたひとりでした。

昨日ふと「そもそも鳥人間コンテストとは何か」気になり、このレースの前後関係も調べてみました。

動画の中村拓磨選手が所属する東北大学ウインドノーツ。

2011年と言えば震災のあった年。地元を勇気づけるため、今大会にかける想いは例年と違ったという。

順調に離陸するも3km時点でトラブルが発生。信号に障害が発生し地上からの指示を受け取れなくなります。風に流され機体は旋回し、スタート地点に戻されることに。上の発言はそういう理由から出ていたものでした。

文脈を理解することの重要性

「クソっ・・・フルパワーだぜっ!!信じらんねぇ!!」

なんとか大きく旋回し進路を立て直すも、まだ3km地点。すでに体力を半分使い切っていました。

あと改めて見て思うけど、あんな重そうな機体を1人でペダル漕ぎ続けて空飛ぶの本当すごいわ。

ネタにされてますが、あの状況だと自己暗示をかけるように叫ばずにはいられないらしいです。あと鳥人間コンテストは出場するのも審査が厳しいらしく(命の危険あるからそらそう)、新規のチームが出場するのはほぼ無理らしい。パイロットに至っては3回も審査を受けているとのこと。

そこから中村選手は足をつり、痛みにより絶叫をあげながら地元民の期待に応えるため気力で漕ぎ続け、34kmで着水。東方大学が優勝。そういう動画だったのでした。全く知らなかった。

なんでもそうですが情報というのは編集され「点」で発信されるので、その前後の文脈を理解し「線」で捉えると見えてくるものがあります。

それは美術の世界でも同じ(なんでも繋げる)

この動画はエンタメ動画ではなく、奇跡の動画だったのだなと思いました。そして同時にエンタメ動画でもあるからすごい。

現在の中村選手について

その後中村選手はアメリカ留学を経て東北大学卒業後、ジョージア大学大学院に進学。専攻は航空宇宙工学。

20代の大半をアメリカで過ごしたようです。自家用機パイロットの資格も取得。4年前に結婚し、二歳児のパパ。現在はドローンを使った荷物宅配の研究をしている。ブログを拝見したら、8月にこんな記事を更新されていました。

中二病は夢を見る病気

さて而立の30歳,僕の30歳の自説として「真面目な中二病が未来を創る」説を掲げたい.
中二病というのは自分を愛する夢を見る病気なのだ.それはすごい才能のはずなのだが,夢ではなく現実に従ったことを求められる世の中では兎にも角にも生きづらい.周りと同じように生きられないならやはり病気なのだろう.

しかし,中二病という言葉が生まれる前から中二病だった僕に言わせてもらえば,僕は中二病だったからこそここまでやって来れた気がする.荒唐無稽な夢から自分の将来を考える.今自分が立っている現状から明日を考えない.最高にクールな自分を想像する.他人に笑われるぐらいの目標を持つのがちょうどいい.現状からスタートして,一歩一歩どうすれば達成できるか具体的に分かっている目標などたかが知れる.まずは中二病的発想からスタートする.

タイムリーに中二病に関する素晴らしい文章を綴っていました。さらにこう続きます。

鳥人間コンテストで優勝すること,アメリカの大学院で博士号を取ること,パイロットになること,研究者になること,宇宙一可愛い子どもを育てること.これらは全て僕がかつて目標にしたことだが,夢でなくなったこれらの経験はもう真面目な僕の一部なのだ.この程度でうかうかはしていられない.僕はこの先宇宙に行き,億万長者になり,鳥人間コンテストを未来永劫ボク個人のスポンサーで運営し,人類が宇宙で暮らせる世界を造る.そんな荒唐無稽なアイディアが無限にあるのだから.真面目な僕が一番大きな夢を見る.

元はテレビ番組の企画からはじまった鳥人間コンテスト。発射台は1億円もの建設費用がかかっていて、とにかく採算を取るのがキツいらしい。リーマンショック後の不景気ではスポンサーが集まらず、2009年は開催されなかったりもしたそう。

そういう事情も全く知らなかったが、ゆえに中村選手は億万長者になって個人スポンサーとして未来永劫鳥人間コンテストを続けようとしている。他にも素晴らしい夢の連続です。

やっぱり文脈だったりとか、その後を知ると楽しい…。中村選手のツイッターアカウントはこちら。

色々知れてとても勉強になったので書いてみた次第です。最後に、あの鳥人間コンテストに対する中村選手のコメントの返しがすごい良かったので紹介したい。

鳥人間放送したからかブログや2ちゃん,ニコニコに色々と僕に対するコメントが(笑) 褒められるのは嬉しいけど,どんな大学行ってようが研究してようがパイロットだろうが夢を追ってようが無かろうが,あの動画はとりあえずキモいし暑苦しいだろ(笑)