千住博さんの「芸術とは何か」という本が、質問形式でアートに関する様々な問いに答えてくれので読みやすくてオススメです。
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以下、個人的に勉強になった部分のメモです。
岡本太郎が海外で評価されてない理由
日本で最も有名な芸術家って大阪の太陽の塔や「芸術は爆発だ!」というセリフでお馴染みの岡本太郎だと思うんですが、世界では無名なんですね。
その理由は、拠点をパリから日本に移し最盛期を世界で知られることなく終わったことだと千住さんは語ります。
世界的に有名な草間弥生さんはギリギリまで本場ニューヨークで活動しました。
また、少々タレント的に動きすぎたのも作品に悪い影響与えたかもしれません。
ビートたけしはテレビでどれだけふざても自分の映画に関しては絶対に触れず品格を保っています。
生きてる間はオークションに出されないのが理想
オークションで「○○億円の値がついた」といった話がどうしても話題になりがちですが、冷静に考えればオークション(二次流通)に出てるということは、最初の購入者が何かしらの理由で売却しているということなんですよね。
しかも、オークションで何億円と値が付こうと、作家には1円も入ってきません。儲かるのは売却者とオークション会社だけ。
と考えると、オークションにたくさん作品が出ることは作家として本当に良いことなのでしょうか?
奈良美智さんのこの発言は非常に興味深いです。
よ~~~くわかります!
去年、オークションで自分が描いた絵が27億円で落札されてたけど、自分には1銭も入りません。 https://t.co/RrDN2ijqZd— yoshitomo nara / 奈良美智 (@michinara3) March 20, 2020
2次的な価格が緩やかに上昇すればいいのだと思うけど、自分の場合は高くなるものとそうならないものの差が(作品の良い悪いの差)ひじょ~に激しいので困るのです。また高くなると美術「品」としてのステータスが上がり、なんだか変なプレッシャーを自分は受けます。
— yoshitomo nara / 奈良美智 (@michinara3) March 21, 2020
日本でも追及権が法律で認められたり、今だとNFTがそういった問題を解決するのでしょうか。
千住さんは生きてる間にオークションに出されないために、良い画商と良いコレクターと良いジャーナリストと良い美術関係者の中で生きていくことが大事だと語っています。
ジェフクーンズなどポップアーティストらは「高値が付くこと」それ自体を作品コンセプトしています。
ここはメディアやお金のイメージに惑わされないようにしたいですね。
作品を自分で破棄するのも作家の仕事
「その時は良いと思っても数年経って良くないと思えた自分の作品は買い取って破棄したい」という衝撃の発言が出ました。
可愛がられない作品の一生を終わらせるも作家の仕事だと。
これは村上隆さんも言ってましたね。自分が死んでしまった後作品のコントロールが効かなくなるので、生きてるうちに過去の駄作を市場から回収して、破棄すると。
世界の人が求めているものは日本にある
世界中の人が今何を求めているのか?
その”何か”は日本の中に多数あり、東西文化の伝播を考えても世界は日本にある。それを鋭く見抜いて提案するのが芸術家の役割だと千住さんは語ります。
しかし重要なのは、”日本人として”ではなく”人間として”描け、と。
「オリエンタリズム」という言葉がありますが、先ほど挙げた村上さんや奈良さんなどのトップ日本人アーティストは意図的にそれを取り込んで世界進出したとも言えます。
オリエンタリズム(上) (平凡社ライブラリー) [ エドワード・W.サイード ]
芸術とは相互コミュニケーションである
「芸術=自己表現」だと捉えられがちですが、何やっても言い訳ではないと個人的に感じています。
それは芸術ではなく、オナニーだからです。千住さんは「現代に生み出される美術でも、現代の人に必要とされる内容がない作品(=作家が現代の問題に正体して直面してない)は現代美術と言えない」と本書で語っています。
人間が人間に対して反応を考えながら行う行為すべてが芸術的行為であり、逆に一方的な通告、告知、報告など相手の反応を考えない態度は芸術的行為ではない。
私たちがどういう時代を生きているか自らの言葉で代弁するのがアーティストだと、松山智一さんもおしゃってたのを思い出しました。
現代アーティストの仕事は同時代を言語で投影すること。言葉を生み出すこと
それと、日本画に対する考えが変わったのが大きな収穫です。おすすめ!