変化を望まないファン vs 昨日すら過去と捉え変化し続けるアーティスト【アートのお値段】

先日「アートのお値段(原題:The Price of Everything)」というドキュメンタリー映画を観てきました。

「なんでこんなものに100億円も!?」とアートに対して思いながら絵を描いてる僕としては、観ないワケにはいきません。

中でも一番印象に残ったのがラリー・プーンズという81歳のアーティスト。ポスター右上にいる絵の具まみれの老人です(左には現存作家最高額を誇るジェフ・クーンズが対照的に配置されている)

彼は50年前の1960年代に、ドットペインティングと呼ばれる抽象画で一世を風靡したものの、本人はそこから絵のスタイルを変えたため人々から忘れ去られていました。「”死んだと思ってた”と言われた」とも本人が語ってました。笑

アトリエで今もなお1人で描き続ける姿が印象的でした。

ファンは変化を望まない

そしてプーンズのファンだという3〜40代くらいの男性が現れ「あなたの初期の作品のファンです」と話します。

プーンズは「初期の?」と笑いながら返したけれど、その後男性は「いや、今の絵も好きですよ」と苦笑い。このやり取りに生々しさを感じましたね。こういうのモノ創りしてる人にはよく話だと思います。

そしてプーンズはカメラの前「もう昔の絵は二度と描かない」と語ります。

「変化することこそアート」、「私はベートーベェンのように生きる」と。

おそらく60年代のドットペインティングを描き続けていればある程度の富や名誉を得ることができたでしょうが、プーンズはしませんでした。

そして81歳になって再評価がはじまり、展示を開くことになります。その中には、プーンズの絵を観て感動して涙を流す人も。

そしてある女性がプーンズに「あなたの絵が好きよ。これからも変わらないでいてね」と話します。その時のプーンズは笑ってましたが、特に何も返答しませんでした。

生きることは変わり続けること

変化を望まないファンもいるし、昨日すら過去と捉えて変化し続けるアーティストもいます。世の中は常に諸行無常ですし、「生きることは変わり続けること」だと思います。

アーティストが同じものを作り続けていたら、それは”作品”ではなく”製品”なのではないか(ポップアートやシミュレーショニズムの作家は製品を作ることすらコンセプトにしてますが)

最近感じるのは、偉大な作品ももちろん残したいですが、生き方自体が芸術的な人がかっこいいですね。金や名誉に囚われず(囚われながらも)自分を信じて生き続けたいものです。