8ヶ月通った現代アートの学校で学んだこと得たもの【アートト】

6月から通っていた「アートト」が終了しました!

6月から通っていた現代アートの学校(アートト)がついに終了。全4コース+補講で57コマ、美術史から批評の書き方などリベラルアーツ的に学べました。プロの美術家から講評受けるの初めてで、苦しい記憶ばかり思い浮かびますが笑、正直まだまだやりたい気持ちで一杯です。さて、ここからどうしていくか pic.twitter.com/SuTdYAOZOt

— Rui Yamaguchi/プロ無職るってぃ (@rutty07z) January 23, 2022

解放されたような、寂しいような、物足りなさのような、色んな感情が複雑に存在してる感じですが、何とか1コマも落とさず全コース出席しました。

膨大なインプットに脳が完全シェイクされてます。これから時間をかけて咀嚼して制作に活かせればなと。

終わった直後の感想はラジオで語ってますw

そもそもなぜ学校に通いはじめたのか

講師のような立場で人に教えたり話したりする機会はあっても、学校通って誰かに教わるのは大学生ぶり。

通いはじめた理由としては

  • 金沢での生活飽きてきた(刺激的な環境に身を置きたい)
  • 美術やってて適切なフィードバックを受けることがない
  • 今まで独学だったので現代美術とは何か、歴史や理論を1から学びたい
  • 絵画表現への疑問(表現の幅を広げる)
  • このご時世に完全オフラインは超良い

それに伴って金沢からまた東京に居住地を移しました。

適切なフィードバックを受ける機会がない

僕は美大などのアカデミックな教育を受けず、独学で美術はじめて2年ほど経ち、ありがたいことに展示の機会にも恵まれたのですが

ヤバいなと思ってたのが、適切なフィードバックを受ける機会がほとんどないということ。

作品観てくれる人たちは基本的に「いいね」とか「カッコいいね」しか言ってくれません。

それは嬉しいことなんですが、本当にそれで大丈夫なのかな。独りよがりな表現になってないのかなと不安になる訳です。

コンペに作品出しても、審査員からコメントもらえません。ただただ「落選」の文字が送られるだけ。

本当に気の良い人、何か思ってる人は、無言で立ち去るのですが、何か言ってくれるなら言って欲しい。しかも意見もらうなら、プロからの意見じゃないと…この言葉を思い出しました。

「素人のアドバイス」と「プロの感想」は無視でいい

「プロのアドバイス」と「素人の感想」は参考にすべき

まあ自分だってお金積まれないと本気のフィードバックなんてしないし(する訳ない)、「いいね」しか言わないのですが…。この生活はまずいなと。環境を変えなければという危機感がありました。

褒められることしかない、生活の危機感

作品だけで鑑賞者と関係を作ることは可能なのか

みんな応援の意味で作品を観に来てくれるんですね。

けどまだ「僕ありき」で展示来てくれたり、作品を買ってくれる。特にSNSでの情報発信からキャリア出発してるので、フォロワーさんも観に来てくれます。

それは本当にありがたいことなんですが、プロとしてやっていくにはそこを乗り越える必要があるわけで。

「自分ありきの作品」だと、例えば自分死んだら作品観られなくなるんじゃないかなぁ、とか。

俺の存在抜きに、作品だけで鑑賞者と関係性を作ることは可能なのか。作品が自律的に運動していかなければ、プロとして、日本を飛び出して世界にいけないのではと。

なんか熱い感じになってしまいましたがそういったことについて考えてる時期でした。しっかり現代美術学ぼうと。

インスタのストーリーで偶然「アートト」を見つけて、大変失礼ながら講師誰も知らなかったのですが勢いで全コース申し込みました。

学校で学んだこと(全57コマ)

アーティストコース

1)作品のプレゼンテーション
2)制作動機と作品の自己分析
3)同時代に対する視点を探る WS
4)同時代性と表現の種
5)表現の種から作品を考える
6)作品を成立させるための要素を考える
7)新作のプレゼンテーション
8)「空間」から作品を考える
9)空間を読み解く力をつける WS
10)歴史と記憶から空間を読みこむ
11)作品から展示空間へ
12)作品を展覧会でよく見せるために
13)新作のプレゼンテーション
14 )自立したアーティストになるために

アーティストしか参加できないコースで、これが学校のメインでした。

自分の強み/弱み、社会に対してどんな問題意識を抱いてるか掘り下げる「自己理解」的なWSを繰り返し、制作したものをプレゼン→講評を3セットくらい。

先ほどから書いてるフィードバックに関しては嫌っちゅーほど受けて、思考や作風も変化してきたのですが、まだまだ試行錯誤中です。

辛かったけど本当に受けて良かったと思ってます。この辺の葛藤は全て「月額マガジン」にむちゃくちゃ書いてます。

特に「美的感覚を捨てろ」とか「当事者性」みたいな話は、今でも、ずっと考えさせられています。あれはどういうことなんだろうと。

作品をどう展示するか、空間を探る授業も面白かったです。

アートヒストリーコース

1)アートが先か、美術館が先か
2)現代アート、ゲームの規則
3)近代絵画の使命―マネ、クールベから抽象絵画まで
4)二つの世界大戦とアート―ダダとシュルレアリスム
5)ヨーロッパからアメリカへ
6)マルセル・デュシャンが開くインスタレーションの道
7)時間よ止まれ!ー写真が明かした世界の姿
8)スペクタクルの社会と映像文化
9)戦中・戦後日本の前衛芸術
10)1990年代のグローバリゼーションと多文化主義
11)新自由主義と二極化するアート
12)生み出された地方と芸術祭
13)絵画は、いま
14 )複雑な世界と多様化する表現

基本的に座学ベースで「アートがどのようにして今の形になったのか」、ここ200年くらいの美術史を辿りました。

特に批評家の沢山遼さんの授業が面白くて、デュシャンの講義は衝撃的に面白くて、デュシャンに関する本読みまくってました。

沢山さんの本

ここで学んだことも、ブログで徐々にアウトプットしたいな。

アートライティングコース

1)アートについて文章を書くということ
2)作品について書く
3)作品の成立背景をしらべる
4)展覧会のレビューを書く
5)展覧会の主旨と作品の関係を読み解く
6)モヤモヤを言葉にして企画を考える
7)要点を整理して企画案をまとめる
8)発表とまとめ

鑑賞した作品や見に行った展示のレビュー書いて、議論したり添削を受ける授業。ブログ書きまくってた自分が、はじめて人からライティングを学びました。

ここで学んだことや書いたレビューは(大変稚拙ながら)ブログで晒してます。

ショートカットして何者かになること。それは「自分らしく生きること」なのか社会の仕業か

自分の中で明らかに展示の見方が変わった瞬間があって、それは「海、リビングルーム、頭蓋骨」展でした。

批評「海、リビングルーム、頭蓋骨」境界を規定せず曖昧なまま生きること

ライティングの授業で学んだことは、ざっくりこちらにまとめてます。

美術批評の書き方のコツと展示方法から散りばめられた意図を探る

リーディングコース

リーディング(Re) 全6回

歩行について、いくつかの文章を読みながら考える6回のコースです。目的を持たず、地図や情報にとらわれず、また機器を頼らない歩行というものは、技術の発展によって生活文化がますます快適になるなかで、どのような意味を持つのでしょうか。人間が生まれてはじめて自らの力で獲得した移動手段のラディカルさについて、コロナ禍との関係で考え、語り合います。同時代に対する視点を得たいアーティストや社会人などにおすすめです。全ての回は、小澤慶介により行われます。

触れる予定の書籍
ティム・インゴルド『ラインズ 線の文化史』
レベッカ・ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』ほか

正直何をするのかよく分かっていなかったコースですが(オイ)、衝撃の連続でした。

世界中またにかけて移動生活していたものの、移動や歩行について、考えたことなんてなかったです。

そうした行為が持つ意味や考え方がガラリと変わったかも。読んだ本や資料が面白すぎました。

書評「ウォークス 歩くことの精神史」歩行は空間の断絶化に抵抗する唯一の手段である

「ラインズ」書いたティム・インゴルドとか頭おかしいんじゃねぇかと思う。

著:ティム・インゴルド, 翻訳:工藤 晋

「心理地理学」という学問や「クレオール文学」の存在や考え方も初めてしりました。

著:ギー ドゥボール, 原著:Debord,Guy, 翻訳:誠, 木下

紹介された本は今まで全く触れたことない分野ばかりで、インプットし過ぎて夏〜秋本当に頭爆発しそうになったんですが、こちらも咀嚼してブログでアウトプットできれば…!

視点のプール

アートの実践
1)2021年、美術批評家が見たニューヨーク
2)美術館へ行こう!
3)アーティス・イン・レジデンス(AIR)と緊急事態

身体とアイデンティティ
1)まずは、廊下から
2)わたしの/ではない身体
3)言葉・身体・アイデンティティ

時代の転換期に、アートは
1)戦時下美術教育と「構成」のゆくえ
2)揺れる言語と表現を ー 大正期の芸術について
3)人間と表現の変容 ― 第一次世界大戦とアート

グローバルスタディーズ
1)失われたエコロジーとアートの関係
2)自己と他者のあいだに
3)包摂と排除―移民と移動をめぐるアートの歩み

記憶とアーカイブ
1)3.11をめぐる記憶の表象
2)前衛芸術の保存と再現
3)まちとアートとアーカイブ

学芸員や大学教授、現役の美術家などをゲストとして呼んだ補講のような授業。視点のプールも全て受けました。

特に面白かったのは

  • グローバルスタディーズ全般
  • 美術批評家沢山さんの移民(欧米で活躍した日本人作家)の話
  • 百瀬文さんの「わたしの/ではない身体」
  • 荒木悠さんの「言葉、身体、アイデンティティ」
  • 東大教授森本庸介さんの「まずは、廊下から」

人生において、廊下について考えたことある!?という衝撃。

プロの美術家として活動する(しかも年近い)百瀬さん荒木さんの話は参考になり過ぎたし、研究員として1年間NYに滞在した沢山さんの話は毎度おもしろかったです。

今後の活動について

そんな感じで、8ヶ月間で全57コマ受講しました。2021年は完全にアートトの年でした。

辛かった記憶もありますが()、美術に対する捉え方や、自分の作風について考え方が変わりつつあり、本当に行って良かったです。

むしろ行ってなかったらずっと独りよがりの作品つくってたのかな…ちょっとぞっとするな。

久しぶりに「学校に通う」という経験を通じて、やっぱり自分は学ぶことが好きすぎるし、今後も一生勉強していきたい所存です。

な・の・で!このあとの活動について、制作しながらいろいろ考え中…。ではまた!

2022年3月追記:藝大の院に行くことになりました。

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