「もう消費されない、後世に残るほどの言葉を発信する」 プロ無職るってぃが見つけた新たな武器、ポエトリーリーディング

━━TBSラジオ主催の「WORD WAVE」でポエトリーリーディングデビューを果たしたわけですが、ライブの感想はいかがですか?

 

るってぃ(以下 る):死ぬほど緊張しました。ポエトリーど素人がデビューでこんな大きなステージに立たせてもらえるのは本当にありがたいことだったのですが、とにかく不安で不安で…。

神門さんとか、小林大吾さんとか第一線で活躍されてる方、くじらさんのような幼少期から詩を書いてたような人達と一緒にこんな素人が上がるわけです。オファーが来た1月から、毎日不安で押しつぶされそうでしたね。

━━オファーが決まってからライブまでの1ヶ月半をどう過ごしましたか?

:学校で出てくる文学の授業をフル無視してた僕としては、まず詩やポエトリーリーディングを理解しようと、成り立ちや歴史、社会的な役割をこれでもかというほど調べました。

ブログを読み漁ったり、詩集を買って読んだり、好きな歌詞を書き起こしたり、色んなミュージシャンのインタビューを読んだり、みんながポエトリーリーディングをどう解釈してるかSNSでエゴサかけたり…

そして自分の経験と混ぜ合わせて、「なぜ自分が発信活動をはじめて3年半というこのタイミングでポエトリーに惹かれたのか」を、率直に詩として書き起こしました。そうやって、調べながら詩を作っていった感じですね。あと毎日緊張と不安で辛くて、東南アジアに1週間ほど現実逃避しに行ったりもしました(笑)

理想のライフスタイルは手に入れた。でも、また周りの目が気になりはじめていた

━━るってぃさんはどうしてポエトリーリーディングの魅力に取り憑かれたのでしょうか?

:4年前、大学を卒業して就職してみたら、噂通りそこに自由や生きがいはありませんでした。「学生時代が一番楽しいから今のうちに遊んどけよ〜」と言う大人がいますが、このままじゃ自分がそんな大人になる気がして。

「俺の人生こんなとこで終わってたまるか!」と思って、会社員をしながら言葉を発信すること、つまりブログを始めたんですね。そしたら割とすぐにウケて、1年も経たずに独立できたんです。

「やったー!毎日楽しいー!」みたいな感じで、世界中を旅しながら発信活動をしてました。けど、理想としてたライフスタイルは手に入れたものの、見てくれる人が増えていく中でまた不自由さみたいなものも感じてしまって…。

━━スランプでしょうか。

:僕、もともと22歳まで周りの目を気にして生きてたんです。ある挫折をキッカケにニューヨークに逃げるように留学したんですが、それが初めての海外というのもあって、自分の中で天変地異起こるほどの衝撃で。

もう、周りの目を気にして生きるの辞めよう。1度きりの人生、もっとわがままに全力で生きようと決めて、そこから今のプロ無職という活動に繋がるんです。

けど、プロ無職として見てくれる人が増えていく中で、気づけばまた周りの目を気にしはじめていたんです。

「自分が死んでも後世に残るほどの言葉やコンテンツを発信したい」

━━SNSのフォロワーが数万人いるからこそ、言いたいことも言えなくなってしまったみたいな。

:2018年の夏くらいからずっと暗闇の中にいた気がしました。おそらく、他のクリエイターと比べてしまって、今のように文章だけで言葉を発信していくのは限界だな〜って。なんかほんと、周りと比べて劣等感で苦しんでましたね。

それで感じたのは、やっぱり人の記憶に残る音楽は強いな〜って。音楽って、聴けば遠い昔の記憶も鮮明に思い出せるし、国境を超えてひとつになれる。音楽は「崇高な言語」だと思ってるんですけど、言葉を発信する者として、やっぱりここは避けて通れないなって。

発信活動はじめて3年経って、自分が死んでも後世に残るほどの言葉やコンテンツを発信していきたいと強く思うようになりました。今のままじゃ、消費されて終わるな、って。

━━それで、ポエトリーリーディングに繋がっていく訳ですね。

:講演会やトークイベントは毎月のように登壇していたので、DJを呼んで、音楽流しながら叫ぶようなライブをしたらどうだろう、というアイデアがまず思いついたんです。

そんな形のトークライブやってる人いないか探したり、音楽に詳しい知人に話を聞いたり。

そんな時に、「てかポエトリーリーディングじゃんそれ!」って繋がって。ポエトリー自体は、不可思議/wonderboyを会社員やってた頃から聴いていたのもあって元々知っていて。僕がポエトリーやったら、また新たな世界にいけるんじゃないかって。

そこからポエトリーの歴史を色々調べてみるとビックリしました。「これ、マジで俺のためにあったんじゃないかな?」と思うほどに。絶対これだ!今の俺にはこれなんだ!って、ワクワクが止まりませんでした。

 

━━具体的にポエトリーのどのような部分に魅力を感じたのですか?

:かつての吟遊詩人は王の相談役から伝達者、ジャーナリストなどの様々な役割を担ってたこと。戦後のアメリカに「ビートジェネレーション」と呼ばれるポエトリー世代がいて、多くの若者を覚醒し、旅へと駆り立て文学を自由にしたこと。

そしてポエトリーリーディングは、政治・社会活動から、ヒッピーを代表とする”カウンターカルチャー”の基礎を作り上げる機能を果たしていこと。これら全ての史実と

ポエトリーリーディングとは、巨大なシステムに対し、中指を突き立てる行為であると同時に、平和や協調、そして共振や共感を、態度で示す行為であるのだから

という文を見つけた時に「これだ…!」って。

━━まさに、自分の活動と合致していたと。

:本当にびっくりするくらいそうで!クラウドファンディングで資金を集めて海外行って取材して発信する、ジャーナリストのようなことを元々やってたし。僕のブログや講演会を見て「行動はじめました」って言ってくれる人もいたし。インプットした情報を言葉でアウトプットする、まさに吟遊詩人的なことをやってたんですよね。

それに、”プロ無職”という肩書き自体、労働を美徳とする日本社会へのカウンターカルチャーみたいなものですし、僕がこれまででバズったコンテンツのほとんどが、社会への怒りや抑圧から生まれたものなんです。

まさに「巨大なシステムに対し、中指を突き立てる行為」という言葉が自分にピッタリでした。

 

━━ポエトリーリーディングはるってぃさんが新たに見つけた「表現の武器」ですね

:普通にTwitterに書いたら怒られそうなことも、詩にした瞬間「気持ち良くなる」んですよね。”言葉”だと強すぎるものが、”詩”にしたらマイルドになったり、今までスルーされてた層に受け入れられたり。

素人がいきなり音楽をやるのはハードルが高すぎる、でもポエトリーは音楽と文学の間に位置していて、テキストで言葉を発信していた僕にとっては、それを口に出して読み上げるってすごいセクシーで、パワーのいることだなぁと。でもポエトリーを通して、さらにヤバい化学反応が起こるんじゃないかとワクワクしてます。

発信力が中途半端に増して、また周りを気にして言いたいことも言えなくなりそうになった自分を、良い意味でぶっ壊してくれそうです。

「無知は武器になる」プロ無職るってぃ第二章、楽しみにしててください

━━デビューライブで大切にしたことはなんですか?

:大切にしたのは、素人ならではのガムシャラ感ですね。“無知”ってある意味武器になると思うんですよ。無知だがらこそ、常識にハマらない動きが出てくるのかなぁって。やっぱり同じとこでずっと活動すると、型にハマって自分の中で常識が作られていくんです。ポエトリーに参入したばかりで常識すら知らないペーペーですが、それを逆手に取って、率直に自分の気持ちを発しようと。

「デビューライブ」は人生を通して1回キリ。失敗しても、パフォーマンスに対してバカにされても全然良いので、とにかく無知を武器に、ストレートに今感じてることをポエトリーしました。

胎動RABELのikomaさんがオファーくれた時に言ってくれた「初めてだからこそ出る動きがある。だから面白いと思うんだよね」という言葉も大きかったです。

不安で押しつぶされそうでしたが、ライブ本番に近くにつれ、逆に何も考えなくなりました。

 

━━ライブを終えて、いま感じることはなんですか?

る:たぶん、プロ無職とか名乗って別の領域で活動してた僕がポエトリーシーンに来たことに対して、ネガティブに捉えた人もいると思うんです。

詩の世界ってすごい神聖で、文化人しか踏み入れちゃいけないところ、僕には関係のない世界だと思ってたのに、こうして導かれてることに僕自身一番驚いてるので。だからまあ、本当に人生って何が起きるかわからないなって。4年前に不可思議/wonderboyさんからポエトリーリーディングを知り、そしてまさか自分がやるなんて1ミリも思ってなかったし。

人生って無駄なことなんてひとつもないですよね。無駄なようで、脳には経験としてしっかり刻まれていて、それが将来、点と点が線になる可能性がある。だから、もっともっと挑戦していこうと思います。ポエトリーも今後とも積極的に発信&ライブしていきます。

音源とかしっかり作って、たくさんの人の心に響くようにスポークンワードしていきたいと思います。

プロ無職るってぃ第二章、楽しみにしててください。

Photo by 安東 佳介。

※こちらの記事はポエトリーデビュー前にすでにその未来が成功したことをイメージするために実施した自分インタビューです。

実際のデビュー直後の感想はこちらの記事をどうぞ→もう、単刀直入に見てください。僕がポエトリーの舞台に立つまでの軌跡