詩「Suchness」

僕が言葉を発しても
それは歌にはならないが
バンドマンが路上で歌を歌っても
僕のように誰かの足を止めることはできない

僕が社会に対して何かを言えば
目くじら立てて怒る人がいるけれど
いっぱしの歌人が何かを言ったところで
炎上すらさせることができない

僕と、バンドマンと、それから歌人

みんな違ってみんないい?

いや詩人もバンドマンも歌人も
そんな綺麗事言っておきながら
心の中は嫉妬と劣等感の炎で燃えたぎる

音楽は栞?主人公になれるのは自分?

じゃあたくさんブログを書いたところで
人の記憶に残りにくい文筆業はあんたらより劣ってるのかよ?

文章は手軽で、今日この瞬間からできて
内部崩壊もなければ事務所に所属する必要もないし
ちまちまお金だって稼ぎやすいんだろ?

みんな違ってみんないい

いや、そんなことを心から思えてるやつなんか、誰一人としていないから

多様性だとか、ダイバーシティみが深いとか、そんな言葉で片付けられないから

心の中に、高く、真っ赤に燃えた炎を焚き続ける

そして今日もそこに、ガソリンを注ぎ続ける

憧れたステージの上
握るマイクと汗
想いを声にしたい葛藤との勝負の行方

死を回避するために頑張るTwitter
日銭を稼ぐためのそれっぽい言葉
そこから出る言葉になんの意味はあるのか

だから今は何かをやることよりも
好きな曲を口ずさみながら散歩して
帰って
その曲の歌詞をペンでなぞったりして
あまりの流れの美しさに涙を流し
心に残った歌詞をエバーノートに保存する

自宅に帰るまでの夜道が
曲が途中だからまだずっと続けばいいのに…
ってひとり想いにふけったり

そんなセンチメンタルのトンネルが、
永遠(とわ)のように果てしなく続いています

ふと振り返れば、偽物が発する言葉に
偽物が集まり
偽物の街が形成されていく
偽物が俺のメンションをつけて呟き
それにつられた偽物が巻き込みリプを繰り返す

フチに色がついたアイコン
だせぇフォントの文字入れたヘッダー
黄色の絵文字がチカチカして、目と心臓に悪い

フォローとかフォロワー数とか
インプレッションだとか
訳もワカンねぇ言葉を浴びて

抽象よりも論理で
想いよりも分かりやすさで
感情の揺れ幅じゃなくていいねの数で測られて

気づけば脆い言葉を発していた

一瞬で光を浴びるけど、すぐに錆びて消費されてしまう
でも中毒性があって、それを服用することを誰も止められない
そう、まるでドラッグ

集まる依存心
眼差しと羨望、
嘘だらけの意気込み

それが言葉という魔法を巧みに操って、安易に人の心にアクセスした僕の責任です

手のひらの液晶から、簡単に人の人生を変えれると思った僕の責任です

はたまた、「ググれカス」という言葉の意味を教えなかった学校教育の責任です

朝早く起きなきゃいけない暗示にかけられる
誰かに弱音をなすりつけたいと願う

でもネットにそれを出すとアンチに殴られるし
メンヘラが嬉しそうに近寄ってくるし
負は負を呼ぶし

なあ、おれインフルエンサー?
いや、ただ言葉で心をかき乱す、まるでミキサー
怨念を感染させてく様、まんまインフルエンザ

とか、くだらねぇこと言ってみたけど

おれの人生の方がもっとくだらなくて
だから今よりもっと変わらなくちゃいけなくて

平成最期の夏
モヤモヤが始まった夜
孤独にうちひがれそうなりながら聞いたあの日の曲

もう、今日という日が来なければ良いと思ってた

今すぐここから逃げ出したい気持ちでいっぱいで
現実逃避して
バガンまで見に行ったあの夕焼けと一緒に消えたくて

見たいのは命を削った言葉
肘からじゃなくて身体で書く言葉

自発的服従からの解放

本当の覚悟

さらけ出す心

たどり着きたいSuchnessへの高みへ

おれはまた、ひとつ自由になる。

死を持ってお前の言葉が走り出すのか
死をもってお前の言葉は忘れ去られていくのか

もう嘘はつかない
死を回避するためにアートなんかしない
数字のための言葉を発しない

おれは死んでもなお生きるために
明日も明後日も叫び続けるから

挑戦への躊躇
でもこうして踏み出した一歩
ここから繋がってく新しい線路

新しく作られたこのレールに、言葉を走らせて行くから

今日はじまる、第二章

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仏教学者、鈴木大拙は大乗仏教の真如、つまり、”あるがまま”を「Suchness」と英訳したことで、禅は世界に広まりました。

発信活動をはじめて3年半。自由を目指して言葉を発してたつもりが、見てくれる人が増えるにつれて偽りの自分を作り、また不自由を感じ始めました。

そんな自分を壊したくて、導かれるようにポエトリーリーディングに出会いました。

僕は人前で歌うのが嫌いです。カラオケもよっぽど仲良い人と泥酔しない限り行きません。音楽やバンドなんてやったことがありません。

それでも、自分の想いを声に出して読み上げることで、”あるがまま”の境地にたどり着きたくて、震えながらステージでポエトリーしました。

次の、第二章に進みたいと思います。

もう、単刀直入に見てください。僕がポエトリーの舞台に立つまでの軌跡